2007年6月7日(木)「しんぶん赤旗」

自衛隊「情報保全隊」内部文書公表での志位委員長の会見(一問一答)要旨


 日本共産党の志位和夫委員長が六日おこなった記者会見の一問一答の要旨は次のとおりです。


デモや集会への写真撮影は違法行為

写真

(写真)自衛隊による国民監視活動告発の記者会見をする志位和夫委員長(手前)=6日、国会内

 ――盗聴や尾行など明白な違法行為はあるのですか。

 志位 この内部文書の中からは、それら(盗聴や尾行)を確認することはできません。

 ただし、写真撮影は違法です。たとえ、警察が行うものであっても、集会やデモの参加者に対する写真撮影は、個別具体的な犯罪行為が明確な場合をのぞいて、違法となります。一九六九年の最高裁大法廷の判決でも、「何人も、その承諾なしに、みだりにその容貌(ようぼう)・姿態を撮影されない自由を有するものというべきである。これを肖像権と称するかどうかは別として、少なくとも、警察官が、正当な理由もないのに、個人の容貌等を撮影することは、憲法一三条の趣旨に反し、許されないものといわなければならない」との判断が下されています。

 (犯罪行為にたいする)強制捜査権をもつ警察の場合でもそうした制約があるわけですから、ましてや強制捜査権のない自衛隊が、まったく犯罪と無関係の平和的な団体の集会やデモの参加者に対して写真撮影をおこなうのは、違法行為となることは明瞭(めいりょう)です。

 ――情報提供者は複数ですか。

 志位 自衛隊関係者という以上は、(情報源の保護という見地から)コメントを控えさせていただきたい。

 ――現職ですか。

 志位 (自衛隊関係者とは)自衛隊に過去在籍したか、現在在籍しているか、どちらかの方ということです。

 ――情報提供者が提供した意図はどこにありますか。

 志位 「こんなことは許されてはならないことだということで、告発していただきたい」ということが本人からありました。こういう監視活動自体が許されてはならないことだと考えているということでした。

国会での追及、今後の対応について

 ――国会で追及する前に、記者発表したのはなぜですか。

 志位 かなり大部なもので、質問で明らかにする方法も考えましたが、説明自体に時間を要するので、まず会見で明らかにした上で、国会で対応しようと相談しました。明日、参院外交防衛委員会で緒方靖夫副委員長が質疑にたち、この問題について政府の立場をただす予定です。国会での公式の追及はまずこの場でおこないたい。

 さらに、これだけの資料が明らかになったわけですから、衆参とも予算委員会を開いて、首相出席のもとで真実を明らかにする質疑が必要です。衆院でも安保委員会、イラク特別委員会を緊急に開いて、質疑をすることを求めていきます。

 ――民主党の議員の記述もあります。野党間の対応は。

 志位 民主党、社民党も監視対象にされていたわけですから、両党にはこの事実の報告に行きます。国民新党、自民党、公明党にたいしても、政党活動・市民運動にたいして自衛隊という軍事権力が監視対象にすることが許されていいのかという問題であるので、各党にこの事実についてただちにお伝えしたい。この問題の究明は、さまざまな連携を国会でやっていくことができればと考えています。

 ――今回の事案について、検察、警察当局に告発なりする考えはありますか。

 志位 いまそういう司法的な手続きは考えていません。まずは、事態を明らかにし、国会で問題点を究明し、国民的な世論によって反民主的行動を中止させるという政治的な対応が大切だと考えています。

 この問題は、日本国憲法に保障された基本的人権、民主主義を根底から脅かす重大な問題です。こうした違憲・違法の自衛隊による監視活動を許さないという一点で、国民のなかで広い共同を探求したい。

情報保全隊の公式の「任務」にてらしても説明できない違法行為

 ――盗聴など明らかな違法行為は確認されていないのですか。

 志位 さきほどのべたように、その種の違法行為は、入手した文書のなかでは写真撮影はそれにあたりますが、それ以外は確認されません。

 ただより大きく自衛隊法との関係でいいますと、自衛隊法に根拠がない活動という点では、こうした活動の全体が違法だということがいえます。

 情報保全隊を、二〇〇三年に設置されたさいに、政府はどういう説明をしたか。情報保全隊は、自衛隊法施行令第三二条の「自衛隊の部隊の組織、編成及び警備区域に関し必要な事項は、大臣が定める」という規定にもとづくものとされ、この規定にもとづいて「陸上自衛隊情報保全隊に関する訓令」によって「任務」がきめられています。「訓令」の第三条に「情報保全隊は、……部隊及び機関並びに別に定めるところにより支援する施設等機関等の情報保全業務のために必要な資料及び情報の収集整理及び配布を行うことを任務とする」とあります。

 つまり、自衛隊がもっている情報が流出したり漏えいしたりすることを防止する――情報を保全することを「任務」としてつくられ、そのことのために必要な情報収集は許されるということが建前となっています。

 この問題で、二〇〇二年四月四日に、衆院安全保障委員会で、わが党の赤嶺政賢議員が当時の中谷元防衛庁長官に、情報保全隊の任務は何かと質問しています。中谷長官は「任務面においては、従前の調査隊の任務であった各自衛隊の部隊及び機関の保全のために必要な資料、情報の収集、整理強化、明確化に加えて、新たに、職員と各国駐在武官等との接触状況に係る情報収集、また、施設等の機関の長からの要請に基づき、施設等の機関等の組織保全業務の支援を行う」とのべています。ここでも自衛隊の部隊と機関の保全のための業務をおこない、情報の収集もその範囲で必要なものだという答弁がなされています。

 この質疑で重要なことは、赤嶺議員がさらに、「自衛隊員だけでなく、民間人も情報保全隊による情報収集の対象になるわけですね」とただしたのにたいして、中谷長官は「あらかじめ防衛秘密を取り扱う者として指定した関係者のみに限定する」と答弁していることです。

 いまの自衛隊法のどこをみても、自衛隊には、一般の国民にたいする捜査権限は与えられていない、監視権限も与えられていない、調査権限も与えられていないのです。情報保全隊の仕事は、自衛隊の機関や部隊の保全のために必要な情報を集めることにのみ限られることが建前であり、ですから「防衛秘密を取り扱う者しか調査対象にしない」と答弁しているのです。

 ところが、今日明らかにした市民団体などの活動は、「防衛秘密」とはまったく無関係のものです。年金問題にしても、医療費問題にしても、イラク問題にしても、「防衛秘密」には何の関係もありません。ところがそれらをすべて対象にしている。すなわち違法というならば情報保全隊のこうした活動の全体が違法なのです。政府が情報保全隊の「任務」として公に説明してきたことにてらしても、この文書でしめされている国民監視活動はそれをはるかに超えるものであって説明がつきません。その意味で、その全体が違法です。

平素から国民を監視下におき、弾圧や抑圧をおこなう

 ――(会見の冒頭の発言で)紹介のあった「東京」の記者です。

 志位 (情報保全隊の文書に記載されているのは事実に)間違いありませんか。

 ――間違いありません。イラクに行ったほかの方も、自衛隊とは関係なくイラクに行っているのに、監視があったと聞きましたが、なぜそういうことをやっているとお考えですか。

 志位 警察がおこなう犯罪捜査のために情報収集と、自衛隊がおこなう国民監視活動とは、まったくちがった意味をもちます。これは推測ですが、自衛隊が、こうした監視活動を日常的におこなっているのは、いざというときに治安出動によって国民への弾圧をおこなう、あるいは有事法制を発動して国民への抑圧をおこなう、そうしたことを想定し、自衛隊や政府の活動に反対する動向を平素からつかんでおくということではないでしょうか。情報収集は長期間にわたって継続することが重要な意味をもちますし、情報収集の訓練にもなるし、国民弾圧や抑圧への予備段階にもなる。平素から国民を監視下において、いざというときに弾圧や抑圧をおこなう。ここが狙いではないでしょうか。ですから、私たちは、これは「憲兵政治」の復活だときびしく告発しています。


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