2007年6月7日(木)「しんぶん赤旗」

医療・教育費抑制求める

08年度予算で財政審意見書


 財政制度等審議会(財務相の諮問機関、西室泰三会長)は六日、「二〇〇八年度予算編成の基本的考え方」とした意見書(建議)を尾身幸次財務相に提出しました。

 同意見書は、「財政健全化に向けた取組みの歩みを、いささかでも緩めるようなことがあってはならない」と強調。社会保障関係費の伸びのいっそうの抑制や義務教育費のコスト縮減、公務員人件費の抑制などを求めました。同意見書は、政府が今月中に取りまとめる「骨太の方針2007」に反映される予定です。

 社会保障「改革」については、医療給付費の伸びの抑制や医療保険制度における国庫負担のあり方の検討などを求めました。西室会長は同日の記者会見で、来年度予算編成に向けて「医療費について何をやるかが主眼になる」と述べ、かぜなどの「軽い病気」の医療を保険給付からはずす保険免責制度と後発医薬品の問題が「大きな目玉になる」と述べています。

 教育予算については、「メリハリ付けを徹底する」と強調し、義務教育コストの縮減のほか、小中学校の統合・再編の推進、国立大学授業料の「見直し」などを求めています。同意見書は、今秋以降の税制「改革」の本格的・具体的議論に向け、「社会保障給付費等について、基礎年金国庫負担割合の引き上げの財源を含め、安定的な財源を確保」と明記。消費税増税による安定財源の確保についても示唆しました。


解説

国民負担増を合理化

 意見書は、国の「財政危機」を理由に、負担増や行政サービス後退を家計に押し付けることを求めるものです。

 増税と社会保障改悪がすでに家計に深刻な負担増をもたらしています。その上で、国立大学の授業料の「見直し」や医療の公的給付の範囲の重点化などの新たな負担増を強行すれば、個人消費をさらに冷え込ませるのは必至です。

 意見書は、直接的な家計の負担増のほかに、小中学校の「統合の推進」など、行政サービスの切り詰めによるいっそうの歳出削減を求めています。「歳出削減」の名の下で、教育と福祉に責任をもつ行政の役割を放棄させることになります。

 輸出と「リストラ効果」などで、大企業が空前の利益をあげ、法人税収は回復しつつあります。

 意見書はこうした情勢を反映して、より厳しい財政再建目標の導入を示唆。負担増と国民サービスの切り詰めを「合理化」しました。さらに、歳出「改革」で対応しきれない社会保障や少子化などに伴う負担増については「安定財源」を確保するとし、消費税増税すら示唆しています。

 同審議会が、新たな目標を導入する必要に駆られたのは、法人税収増によって「財政再建」の当面の目標に手が届くところまできたことの裏返しです。

 だとすれば、歴代の自民党政治によって、相次いで引き下げられた法人税率を元に戻すだけで、庶民負担増に頼ることなく「財政再建」をいっそうすすめることができるはずです。(山田英明)



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