2007年6月9日(土)「しんぶん赤旗」

主張

安倍内閣の大学改革

教育・研究の基盤崩す競争原理


 安倍内閣が「イノベーション(技術革新)による成長力強化」をうちだしたのをうけて、経済財政諮問会議が、その柱の一つに大学・大学院改革をあげて具体化を検討しています。このほど発表された教育再生会議の第二次報告もうけて、今月中にまとめる「骨太の方針二〇〇七」に盛りこむ考えです。

 その中心的な内容は、大学・大学院へのいっそうの競争原理導入と大規模な再編統合の押し付けであり、教育と研究の健全な発展の基盤を掘りくずすものです。

大学関係者から批判

 国立大学の経営をささえる国からの運営費交付金を、現行の教職員数に応じた配分から、評価によって配分する「競争的資金」にかえるというのが、経済財政諮問会議の検討の方向です。教育再生会議の報告も、教育・研究の評価にもとづく「大幅な傾斜配分」に変えるよう提言しました。国が評価する教育・研究の成果をあげる大学でなければ、交付金を大幅に削減するということです。文科省や財務省の試算でも、国立大学の六割近くが半分以下に削減されることになります。

 法人化されて三年余たった国立大学は、運営費交付金の毎年1%削減などによって深刻な財政ひっ迫におちいり、教育・研究に必要な文献や実験器具が買えない、退職教員の補充ができず大事な講座がなくなるなどの事態がうまれています。大学間格差もいっそうひろがっています。

 安倍内閣のやり方は、こうした事態に追い打ちをかけるものです。財政力の弱い中小の大学、地方の大学では、教育・研究基盤が崩れ、それぞれの地域で教育、文化、産業をささえてきた役割をはたせなくなります。

 経済財政諮問会議などは、競争的資金をさらに拡充するといいます。現状は旧帝大系などの大学に集中し、生命・情報など特定の学問分野に偏重しています。地方の大学や、人文・社会系をはじめ基礎科学の分野は冷遇されています。競争的資金の拡充は、こうした格差をさらにひろげずにはおきません。

 大学の「大胆な再編統合」を促進することも検討されています。交付金改革によって地方の大学の財政基盤が崩れ、単独では経営が成り立たない事態に追い込まれれば、いや応なしに再編・統合に導かれることになりかねません。

 安倍内閣のこうした方向に対して、国立大学長でつくる国立大学協会が、「国立大学に対する正しい理解と政策を求める」とする要望書を提出するなど、大学関係者からの強い批判の声があがっています。こうした声を政府は受けとめるべきです。

 大学改革にあたっては、国立大学の運営費交付金や私立大学の国庫助成を毎年1%削減していく現在の方式ではなく、各大学の基盤的経費を十分に保障することこそ必要です。これまでの削減によって経営困難におちいっている財政力の弱い中小の大学に厚く配分するなど、大学間格差を是正する調整機能をもった方式にすべきです。

公費の抜本引き上げを

 日本の大学と大学院が、二十一世紀にふさわしい役割をはたすために何よりも必要なのは、欧米の半分にすぎない高等教育への公費支援の水準を抜本的に引き上げることです。国民の経済的負担の限界を超え、教育の機会均等を損なっている世界でもきわだった高学費を引き下げることと合わせて、その実現を強く求めます。


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