2007年6月10日(日)「しんぶん赤旗」

安倍首相は自賛するが

京都議定書の目標達成に特別の責任


 「(地球温暖化問題での)議論や成果に大きな貢献を果たすことができた」―安倍晋三首相は八日、サミット終了に際しての記者会見で誇らしげに語りました。しかし、そうみえるのは、政府が最初から、二〇一三年以降の対策で大きく対立する欧州連合(EU)と米国の最大公約数のような折衷案を出していた結果にすぎません。

 京都議定書で義務づけられた温室効果ガス削減の実施期間が切れた後の一三年以降の温暖化対策の枠組みについて、EUは(1)拘束力のある義務的目標をもつ議定書の方式に基づく(2)五〇年までに一九九〇年比で50%削減する―方針で臨みました。ブッシュ米政権は(1)削減は義務化せず自発的努力に任せる(2)数値目標は決めない―を前提条件に国際協議に参加するとの立場を示しました。

 このもとで安倍首相が事前に出した方針は、(1)削減は義務化せず多様なものとする(2)五〇年までに現状比で50%削減する―というものでした。

 コンセンサス方式をとるサミットでは最終的に、これらの立場が一致できる範囲で、(1)削減義務化は明記しない(2)EUや日本などの「50%削減」の決定を「真剣に検討する」―として国連を軸に交渉することが合意されました。

 こういう表現となったのは、安倍首相がリードした結果ではなく、米国内で高まる批判に押されて温暖化問題で積極姿勢を示さざるをえないブッシュ政権を含め、各国が何らかの合意を形成する必要に迫られていたからです。

 今回のサミット合意は、人類の生存を左右する温暖化を抑える壮大な取り組みにとって最初の一歩にすぎません。

 「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)のワトソン前議長は五日に東京で開かれたシンポジウムで、「環境問題では自発的措置でうまくいった試しはない。法的枠組みが必要だ」と強調しました。

 安倍提案は、「50%削減」の目標を各国が「共有」するが、その手段は「各国の事情に配慮した多様性のある」ものにするというにとどまり、拘束力ある義務的目標となっていません。これでは、目標が達成できなくてもかまわないということになりかねません。

 来年の洞爺湖サミットでは、温暖化問題はいっそう切迫した課題となります。そこで日本が主催国としての責任を果たすために第一に求められているのは、京都議定書を生んだ一九九七年の京都会議の議長国としての特別の責任にかけて、議定書で課せられた温室効果ガス九〇年比6%削減の目標を確実に達成する国内措置をとることです。

 責任を国民に転嫁するのではなく、排出量の三分の二を占める産業界の対策を明確にとることが不可欠です。それ抜きには、日本の主張は国際的説得力をもちえません。(坂口明)



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