2007年6月12日(火)「しんぶん赤旗」

「消えた年金」に相談の列

安心のはずが不安材料


 五千万件もの年金が、誰のものか分からなくなっている、いわゆる「消えた年金」問題。各地の社会保険事務所には十一日も、不安を抱えた多くの国民が長い列をつくりました。相談後、胸をなでおろす人がいる一方、不安を残した人、政府の対応を批判する人など、さまざまな声があがりました。(栗原千鶴)


 社会保険庁が十日、東京都内に設置した臨時相談窓口では―。

 「夫の年金が二つあってびっくりしました」。東京都内に住む会社員の女性(41)は、驚きを隠しませんでした。夫が学生時代に払っていた国民年金と、会社員になってから入った厚生年金と、二つの基礎年金番号があったというのです。

 その記録は同姓同名、生年月日も同じでしたが、統合されていなかったといいます。「相談に来てよかった。自分の周りでこんなことがあるなんて驚きです。年金は先のことと思っていましたが、もっと関心をもたなければいけませんね」

 このように、すぐに解決する例もありますが、元国鉄労働者(80)の男性は「国鉄にいたときの年金が給付されていない。調べて、連絡をくれることになった」と不安そうに語ります。

 窓口で解決できなかった人は、納付記録を照会する申出書を提出し、さらに詳しく調べる必要があります。臨時相談窓口ではこの日、相談数九十三件のうち十三件が申出書を提出。しかしその照合には、一カ月以上かかるといいます。

 一年間で五千万件の照合を終えるとする政府。しかし、相談にきたコンピューター関連(IT)の仕事をしているという男性=東京都新宿区=は疑問視します。「コンピューターのプログラムができればすぐに照合できると思うかもしれませんが、機械に打ちこんだり、照合の確認をしたりするのは人間の仕事。簡単に解決できるとは思えない。今回、自分の年金は確認できましたが、今後も不安は残る」といいます。

 安倍首相がすすめる社会保険庁の解体や歴代の大臣へ批判の声も聞かれました。「こんなことになったのは、政府や大臣など、上の人たちの怠慢でしょう」と江東区に住む男性(67)。公務員の女性(58)は「社保庁を民間にしようとしているらしいが、やり方が強引だと思う。これまでも公の機関だから過疎地でサービスができた。これから本当に大丈夫なのか」と怒ります。

 母親(78)と一緒に相談にきた主婦(47)は、「本来は安心のための年金だったのに、不安の材料になっている。国にお金を預けているんだから、行政はしっかりしてほしい」と語りました。



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