2007年6月13日(水)「しんぶん赤旗」

賃上げは企業の競争力をそぐのでは?


 〈問い〉 大企業の好景気が賃上げに結びつかないと国民の本格的な消費は伸びないのはそうだと思いますが、そうすると、コストアップで輸出に影響が出て、国際的な企業競争に影響がでるといわれています。どう考えればいいのでしょう。(大阪・一読者)

 〈答え〉 賃上げをすると、コストはたしかにアップします。しかし、日本の企業が賃上げすることで、国際競争に負けるというようなことはありません。というのは、日本の労働者の賃金は、欧米の労働者と比べても低い水準にあるからです。

 物価の違いを反映した購買力平価で、賃金を比較するのが公平なやり方ですが、この方法で比較すると、日本の賃金を100とすると、ドイツ158、アメリカ129になります。また、為替レートで比較しても、独立行政法人・労働政策研究・研修機構『データブック国際労働比較2006』によれば、日本100に対して、アメリカ107、ドイツ135となっています。

 日本の賃金は、アメリカやドイツなど欧米の労働者と比較しても低い水準にあります。

 しかも、日本の大企業は、バブル期を上回る史上最高の利益を上げています。異常なまでの利潤第一主義で、リストラと海外での売り上げを伸ばしているのがその要因です。トヨタは日本企業で初めて営業利益が2兆円を突破しました。この10年間の大企業(資本金10億円以上)の経常利益の推移を見ると、1995年度は13兆9050億円だったのが、05年度には29兆4326億円と、実に、2・1倍も伸びているのです。一方、労働者の賃金は下がるばかりです。97年をピークとして、大企業の業績が回復した02年以降も減り続けて、05年には、ピーク時の93・5%の436万8000円にまで低下しています。

 企業業績が好調でも、賃金を下げる――こんな国は、世界中を見渡してもありません。アメリカやドイツ、フランス、イギリスでは、99年と比較すると、6%から20%近く賃金が増加しているのです。

 ILO条約にも示されているように、労働条件を競争力の道具にしないというのが国際的なルールです。日本で賃上げを実現することは、国際的に見ても異常な日本の大企業の利潤第一主義を是正して公正な競争ルールを守らせるためにも、また、内需を拡大して日本経済全体を健全に発展させるためにも必要になっています。(藤)〔2007・6・13(水)〕


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