2007年6月15日(金)「しんぶん赤旗」
所得減の人 救済を
税源移譲だけでも増税に
政府は国から地方へ税源を移し替える税源移譲について「所得税(国税)と住民税(地方税)を合わせた全体の税負担が変わることは基本的にありません」と宣伝してきました。しかし、日本共産党の佐々木憲昭衆院議員は、税源移譲だけでも、所得が減った人は増税になることを明らかにし、政府も最大9万7500円の増税になることを認めました(13日の衆院財務金融委員会)。なぜ増税になるのでしょうか。どうしたら救済措置を受けられるのでしょうか。(山田英明)
税源移譲によって、所得税は一月から総額年約三兆円減り、住民税は六月から同約三兆円増えます。政府は、個人の負担は“変わらない”と宣伝していますが、それは、昨年と今年の所得が変わらないことが前提です。
所得税は今年の所得をもとに計算され、住民税は前年の所得をもとに計算されます。〇七年に所得が大幅に減少した人の場合、税源移譲による所得税の減額分は少なくなります。一方、住民税は、前年の所得をもとにして計算されるため、税源移譲による増加額は、より大きくなります。
そのため、所得税と住民税をあわせると差し引き増税になります。この上さらに定率減税全廃による増税額が加わります(表)。
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申告が必要
リストラによる失業や賃金をカットされた労働者、仕事が減った派遣社員やフリーター、今年から年金生活になった高齢者や育児休業にはいった労働者は、昨年の所得にたいし、今年の所得が大幅に減少します。こうした場合には、税源移譲だけでも、ほとんどの場合、増税になります。
税源移譲による住民税の増額を盛り込んだ〇六年度の「地方税法改正」では、収入が激減した人の一部を救済するための「経過措置」が盛り込まれました。
同措置は、〇七年の収入が、所得税の課税最低限以下にまで低下した人(〇七年の所得税がゼロになる人)を対象とし、〇七年度の住民税額を「改正前の税率」(税源移譲前の税率)で計算した額まで減額するとしています。ただし、この措置を受けるには、〇八年七月一日から三十一日の間に納税者本人から各自治体への申告が必要です。
佐々木議員は十三日の質問で、早期に救済措置を周知徹底することを要求。総務省の岡崎浩巳官房審議官は「前倒しで周知する」「できるだけ早期に周知に取り組む」と答えています。
全国の住民税の納税義務者は約五千五百万人(〇六年度、所得割)です。一部自治体の調べによると納税義務者の約6%から7%が救済措置の対象になる見込みです。全国的に同じ水準だと仮定し推計すると、その対象者数は約三百三十万人から約三百九十万人に達します。
減免措置も
一方、今年の収入が、昨年と比べ大幅に減少したものの、今年の所得税がゼロにならない人は、地方税法の「経過措置」(同救済措置)の対象外になります。
税源移譲によって増税になったにもかかわらず、救済措置の対象にならない人たちを救済できる制度の検討と導入が求められています。
自治体によっては、すでに前年と比べ今年度の収入が大幅に減額になった住民を対象に、住民税を減免する措置を設けているところもあります。
たとえば、神奈川県川崎市では、勤労所得者が「退職又はけがや病気による休廃業などにより所得が減少した」場合、前年の所得(合計所得金額が五百万円を超える人は除く)とその減少割合に基づいて、住民税額を四割から全額まで減免する制度を設けています。
地方税法の「経過措置」(救済措置)の対象外となった人も、各自治体の減免措置の対象となる人は、税源移譲による大幅増税を救済できる可能性があります。自治体の減免措置の対象となる人は納期までに申請する必要があります。
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