2007年6月20日(水)「しんぶん赤旗」
論戦ハイライト
自衛隊裁量で対象に
国民監視 危険な実態
参院外交防衛委で緒方議員
日本共産党の緒方靖夫議員の参院外交防衛委員会(十九日)の追及は、自衛隊が自らの裁量で、「消えた年金」問題で怒る国民を含め、すべての国民の動きを監視対象にしている危険な実態を浮き彫りにしました。
自衛隊と無関係
日本共産党の志位和夫委員長が公表した陸上自衛隊の内部文書には、イラク派兵反対運動だけでなく、年金や医療などにかかわる国民の動きも詳細に記録されています。これに対し防衛省は、イラク派兵反対の情報収集に「付随して」行っただけだと弁明しています。
緒方氏は、内部文書には、全日本年金者組合による「年金改悪反対」の署名活動(二〇〇四年二月二十一日)も記録されていることを示し、追及しました。
緒方氏 この実例からも、自衛隊の活動にも「防衛機密」にも関係ない分野も調査対象にしていることは明らかだ。
久間防衛相 自衛隊の業務に支障を及ぼす各種団体等をいろいろとどういう意見を持っているかを調べている。
久間防衛相の答弁は、まさに思想・信条、政治的立場の違いによって、国民を敵視し、調査することを当然視する違憲答弁です。緒方氏は「自衛隊についてどう考えているのか、それによって団体を調べることになる。重大だ」と批判しました。
「消えた年金」も
緒方氏は、公開情報だと開き直る久間防衛相に対し、「参加組合に案内を出しただけの旗開きでの発言が記載されている」などの市民の証言があると示し、オープンどころか内部的な集まりも含まれていることを強調しました。
そのうえで、防衛庁防衛局調査課(当時)が作成した「政策評価書」(〇二年度)を示しました。同文書には、情報保全隊の情報収集活動は「保全事案が発生するおそれ」さえあれば「実施する」と明記されています。
久間防衛相 保全事案が発生してから、あわせて調査しても意味がない。発生する前に調査することは必要だ。
緒方氏 「おそれ」でいいなら、どんどん拡大することになる。
緒方氏はこう批判したうえで、「消えた年金」についての国民の動向も調査対象になり得るのではないかと追及。久間防衛相は、防衛省設置法で定める所掌事務に「情報の収集整理」が規定されていることを挙げ、「調査の相手は、国会議員であってもいい。国会議員だからダメ、共産党ならダメだとか、書いていない限りできる」と言い放ちました。
自衛隊を統制するはずの政治家も監視対象―。歴代政府が掲げてきた「文民統制」の原則をも投げ捨てる重大発言です。
緒方氏は、自衛隊は、何を根拠にして、こんな国民敵視の異常な活動をおこなっているのかと追及しました。
根拠を明らかに
公表されている「情報保全隊に関する訓令」「情報保全隊に関する達」には、調査対象の範囲について、どこにも記されていません。
そこで緒方氏が示したのは、内閣府の「情報公開・個人情報保護審査会」が公開した防衛省関連の答申書です。そこには、情報保全隊の情報収集について定めているものとして「情報業務等に関する達」と「情報保全隊情報保全業務規則」の二文書が記載されています。
緒方氏 これが調査対象を定める根拠になっているのではないか。
久間防衛相 その通りだと思う。
緒方氏は、二文書がいずれも行政規則であって、「自衛隊の裁量ですべてが決められる仕組みだ。自衛隊の判断一つで国民のすべてが対象になる」と批判しました。
さらに答申書には、「保全月報」「情報月報」「保全情報期報」と題する文書を定期的にまとめていることが記されていると指摘。日本共産党が明らかにした内部文書が「これらの報告資料と関係ないと否定できるか」とただしました。
久間防衛相は「コメントできない」と述べ、明らかにしようとしません。緒方氏は、この二文書には調査対象が具体的に記述されている可能性が高く、内部文書の信ぴょう性をいっそう裏付けるものだと指摘し、国会への提出を要求しました。