2007年6月20日(水)「しんぶん赤旗」
バイオエタノール生産どう考える?
〈問い〉 アメリカなどでトウモロコシなどを利用したエタノール生産が急増して、世界の食料供給に影響が出ています。日本共産党はこの問題をどう考えますか?(北海道・一読者)
〈答え〉 日本共産党は、化石燃料から自然エネルギーへの転換を進めるのは必要であり、その一つとしてバイオ燃料の開発・導入も重要だと考えています。ただしそれは、食料需要と競合しない植物資源に限定する、国内・地域産の資源を優先する、生産・加工・流通・消費のすべての段階で環境を悪化させない、など持続可能な方法でなければなりません。その点で、近年、原油価格の高騰を背景に各国で広がっているバイオエタノールの生産には、少なからぬ問題点を指摘せざるをえません。
エタノールの最大の生産国・アメリカでは06―07年度にトウモロコシ原料の生産が前年比で3割も増えています。17年には05年の10倍にするというブッシュ政権の計画もあり、トウモロコシ産地の中西部では、エタノール工場の建設ラッシュが続いています。
その動きは、トウモロコシの需給を逼迫(ひっぱく)させ、国際価格をこの1年で倍近くに高騰させました。それが隣国メキシコでは庶民の食生活を直撃、大規模な抗議デモがおきています。日本でも、トウモロコシの輸入価格が大幅に上昇し、飼料や多くの食品に影響が出ています。人口増や経済成長で食料需要が増えている中で、世界のバイオエタノールの開発が、「人と車の食料の奪い合い」を激化させ、途上国や低所得者の食料を脅かしていることはあきらかです。
さらに、バイオエタノールは生産過程でCO2を吸収するため、地球温暖化対策に役立つとされていますが、現実には、地球環境へのマイナス面が目立ちます。アメリカでは、もうかるということで生態系を無視してトウモロコシに生産が集中し、輪作体系が壊れ、土壌浸食や砂漠化が進んでいます。ブラジルでは、エタノール用のサトウキビ生産拡大のために大規模な森林伐採が進んでいます。そのほかの途上国でも、多国籍企業による食料から燃料用作物への転換やプランテーション型の農業の押しつけによって、小規模農民が農地から追い出される事態なども起きています。日本の商社がインドネシアですすめているパーム油を使った大規模なエタノール生産も、同じような懸念が指摘されます。
日本政府も、エタノールを含むバイオ燃料の利用促進を打ち出していますが、その大部分は輸入になる見込みです。CO2削減をいいながら、遠隔地から石油を使って輸送するのでは、地球環境にやさしいエネルギー開発とはいえません。(橋)
〔2007・6・20(水)〕