2007年6月21日(木)「しんぶん赤旗」
消えた年金 解決を急げ
全員に記録通知を 共産党提案に注目
「消えた年金」問題に国民の不安と怒りが広がるなか、日本共産党は「参院選にのぞむ日本共産党宣言」(十五日発表)のなかで「五つの緊急対策」(別項)を提起しました。「国の責任で一人残らず、急いで解決させる」ことを具体的に求めた内容が注目されています。
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つながらない電話
日本共産党の志位和夫委員長は十九日、緊急対策の第一の柱「政府が現在把握している年金納付記録を、ただちにすべての受給者・加入者一億人に送る」ことを安倍晋三首相に申し入れました。
これは緊急の課題です。五千万件を超える「宙に浮いた」年金記録が大問題になってから、社会保険庁の「ねんきんあんしんダイヤル」などに問い合わせが殺到。
厚労省の集計では四日から十八日の間に、約二百八十二万四千件の電話が集中しましたが、応対できたのは約二十九万件(応答率10%程度)というパンク状態です。
政府自身が「気になる方は、問い合わせを」というビラを配っておきながら、肝心の電話がつながらない事態に、国民のいらだちは募ります。
全受給者・加入者に納付記録を送るには、複雑な作業は必要ありません。社会保険庁のコンピューターには約一億人分の年金記録(受給権者約三千万人、加入者約七千万人)がすでに管理されています。この記録を全員に送付するのは、政府がその気になればただちにできるはずです。
政府は「ねんきん定期便」(一定年齢になった人に限って記録を通知)を発行するといっていますが、いま必要なのは、NHK日曜討論(十七日放送)で小池晃政策委員長が提起した「臨時便」です。
この共産党の提起に賛同の声が広がっています。
政府案は10年がかり
政府は「最終的には全員に通知したい」(安倍首相、十四日の参院厚生労働委員会の答弁)としつつも、「五千万件の突き合わせを最優先にする」という立場です。
共産党が提起している全員への記録送付は、「五千万件調査」と同時並行でおこなうことができるもので、政府の「突き合わせ」作業と矛盾するものではありません。
しかも、政府のスケジュール案では、「宙に浮いた年金記録」に該当すると推定された人に通知が届くのも二〇〇八年夏以降。全員への通知は後回しされ、全受給者への通知は早くても来年秋以降です。全加入者への通知は、「十年がかりで順次送る」というものです。
民主の対応は
民主党は「一億人緊急調査を実施」とのべています(「民主」一日付号外)。具体的にやることは、まず「手書き納付記録とコンピュータデータをつきあわせ」、その修正データにもとづき、受給者・加入者に納付履歴一覧を送るというものです。このやり方では、データの突き合わせや修正自体に膨大な時間がかかり、国民の手元にすぐに記録が届きません。
改善へ具体策
五つの緊急対策では、さまざまな改善を具体的に求めています。
政府は、年金記録の突き合わせの場合、「氏名・性別・生年月日の三条件の完全一致」に限定していますが、これでは、結婚して姓の変わった人、読み仮名を打ち間違えられた人などの統合はすすみません。日本共産党は、「三条件の完全一致」に限定するのでなく、部分的一致を含めて、可能性のある年金記録をすべて見つけ出すことを提起しています。
最近、五千万件とは別に、コンピューターに入力されていない千四百三十万件の記録の存在が明らかになりました。自民党や公明党は「実害はない」などと軽視しています。緊急対策では、未入力情報を調査対象に加えることを求めています。
マスコミ・識者も
「いま必要なのは『臨時便』だ」。「東京」二十日付社説はこう書きました。同紙は、「これでは保険料を納付した国民の不安は高まるばかりだ。その払拭(ふっしょく)のためには、関係する全資料の開示が必要である。まず、年金の納付記録をすべての加入者に送付することだ」とのべています。「朝日」十九日付コラムは「政府は、一日も早く年金加入者全員に、年金記録とわかりやすい説明書を送ることだ」と書きました。
十八日の参院厚生労働委員会の参考人として出席した、政府の「社会保険新組織の実現に向けた有識者会議」座長である佐藤英善・早稲田大学教授は、小池議員から「納付記録を全員に『臨時便』として送る必要があるのでは」と問われ、「その方が基本的にはいまの状況が被保険者に分かる。やれば相当問題点を解消できるのではないか」とのべました。
5つの緊急対策
国に要求している「五つの緊急対策」(参議院選挙にのぞむ日本共産党宣言から)
(1)年金保険料の納付記録を、ただちにすべての受給者、加入者に送る
(2)「宙に浮いた」年金記録の調査を限定せず、可能性のあるすべての人に情報を知らせる
(3)物証がなくても、申し立てや証言などを尊重して支給する
(4)コンピューターの誤った記録を、すべての手書き記録と突き合わせて修正する
(5)社会保険庁解体は国の責任逃れ―年金保険料の流用をやめる、天下り禁止など抜本改革こそ必要
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