2007年6月22日(金)「しんぶん赤旗」
宇宙の軍事利用盛る
宇宙基本法案 自公が提出
自民、公明両党は二十日、宇宙の軍事利用を盛り込んだ宇宙基本法案を国会に提出しました。宇宙の平和利用を明記した一九六九年の国会決議を覆し、米国主導の宇宙軍事戦略への参加に道を開く狙いです。
同法案は全三十五条で構成されており、「宇宙開発は…日本国憲法の平和主義の理念にのっとり」とする一方、「国際社会の平和及び安全の確保並びに我が国の安全保障に資する」と明記し、宇宙の軍事利用を可能にしています。
また、宇宙開発における航空・軍需産業の利益確保のため、国費を用いての宇宙開発に関する研究成果の企業への移転促進や、企業による投資を促進するための税制・金融上の措置を講じるとしています。
宇宙開発の司令塔となる「宇宙開発戦略本部」を設置し、「宇宙開発基本計画」を作成するとしています。「戦略本部」の本部長に首相、副本部長に官房長官および宇宙開発担当相を充てるなど、軍事利用を中心とした宇宙開発を国家事業として進める考えです。
法案は、宇宙開発に関する情報の「適切な管理」も盛り込んでいます。公開が原則の宇宙の平和利用に大きな障害をもたらす危険があります。
解説
海外派兵への基盤整備狙う
日本の宇宙開発を平和利用に限定することは、一九六九年の国会決議で全会一致で確認されました。政府は「平和利用」とは「非軍事」だと繰り返し国会答弁してきました。
しかし、二〇〇三年の情報収集衛星打ち上げや米国の核先制攻撃戦略を補完するミサイル防衛(MD)への参加など、国会決議に反する宇宙の軍事利用が実態として進んできました。
自民党政務調査会は昨年四月、宇宙開発特別委員会中間報告で、国会決議が制約となって、「自衛隊の海外派遣に必要なインフラが整わない」などと問題視しました。
今回、自民・公明両党が提出した宇宙基本法案には「日本国憲法の平和主義の理念にのっとり」とありますが、安倍自公政権の狙いは、憲法の平和原則にまっこうから反するものです。
加えて、法案提出の背景には、国費を使って衛星やロケット打ち上げの受注を大幅に増やしたい三菱重工や三菱電機をはじめとした軍需産業の思惑もあります。
宇宙科学者からは、これまで「自主・民主・公開」の原則で進められてきた宇宙開発に、軍事機密がもちこまれ自由な研究ができなくなるなど懸念の声があがっています。実際、「情報収集衛星」の運用は、国民にまったく明らかにされていません。
宇宙航空研究開発機構労働組合が加盟する科学技術産業労働組合協議会(山崎孝議長)は、宇宙の軍事利用によって「公開ができなくなり国民から隔離される」「従来の(平和的な)宇宙開発予算が削減される恐れがある」として、政府や宇宙機構に宇宙平和利用決議の厳守を求めて繰り返し交渉してきました。(中村秀生)
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