2007年6月24日(日)「しんぶん赤旗」

主張

「集団自決」検定

これでも政府は撤回しないか


 沖縄県民は二十三日、いまから六十二年前、沖縄戦の主要な戦闘が終結したとされる「慰霊の日」を、特別な思いで迎えました。太平洋戦争末期の「集団自決」をめぐり、文部科学省が高校の教科書から「日本軍が強制した」という文言を削除させたからです。

 沖縄の地方議会は県と市町村をあわせ四十二ありますが、このうち県議会を含む三十七議会が文科省に抗議し、検定の撤回を求めています。文字通り県民あげての抗議を前に、あくまでも政府は、検定を撤回しないのでしょうか。

戦争責任の否定

 自民党を含め全会一致で可決された県議会の意見書でも、「集団自決」が「日本軍による関与なしに起こり得なかったことは、紛れもない事実」とのべています。文科省検定による教科書の書き換えは、歴史を改ざんするものといわれても仕方がありません。

 沖縄を「本土防衛」の捨て石にした当時の天皇制政府と軍部は、沖縄県民を根こそぎ戦争に動員し、米軍の占領が避けられなくなると、県民の投降を恐れて、県民を殺害したり、「自決」を求めたりしました。ガマ(壕)から住民を追い出し、軍にとって貴重な手りゅう弾を手渡すなど、日本軍が「自決」を強制したのは紛れもない事実です。

 教育現場でもこうした「強制」の事実は教えられてきたのに、これまでの検定で教科書の記述の訂正が求められてきたことは一度もありません。にもかかわらず今年になって突然、「強制」の削除をもとめるなどというのは文字通り歴史の改ざんであり、犠牲になった県民を冒瀆(ぼうとく)するものです。

 文科省は、当時の守備隊長の一人が「自決」を命令したことはないと主張したことなどを検定の根拠としていますが、たった一人の部分的な証言があったぐらいで、歴史の真実を変えることはできません。県議会の意見書が、「筆舌につくしがたい犠牲を強いられた県民にとって、今回の修正等は到底容認できるものではない」と、検定意見の撤回を求めているのは当然です。

 検定の撤回を求める沖縄をはじめ全国の教育関係者などの批判に対し、伊吹文明文科相は、教科書検定は審議会の意見によるものであり、検定に「口をはさむことはできない」といって、責任を回避しています。

 しかし、審議会の検定意見にゴーサインを出し、教科書として合格させたのは文科相です。審議会を隠れみのにして撤回要求を拒否するなどというのは、文科相として無責任のきわみです。伊吹文科相が今回の検定について、本気で「沖縄の方の気持ちにそわなかったかもしれない」と考えるなら、直ちに検定意見の撤回要求に応じるべきです。

海外での戦争が狙い

 沖縄の多くの県民が、今回の検定による「強制」削除が、ふたたび軍が県民を抑圧する時代を復活させ、国のために死ぬことを「美徳」としようとしているためではないかと懸念していることは重大です。

 実際、「集団自決」を日本軍による「強制」ではないとする安倍政権は、九条改憲によって「海外で戦争する国」になることをめざし、過去の戦争を「正義の戦争」だったと美化し、「従軍慰安婦」問題でも「強制がなかった」といっています。

 ことは決して沖縄だけの問題ではありません。歴史的事実の改ざんを許さず、「戦争をする国」づくりに反対することがいよいよ重要です。



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