2007年6月24日(日)「しんぶん赤旗」

「従軍慰安婦」強制を否定

自民・民主議員ら 米紙への意見広告

批判・怒り世界から

米副大統領も「不愉快」


 「従軍慰安婦」の「強制連行はなかった」と主張する自民、民主両党の「靖国」派の国会議員らの米紙ワシントン・ポストへの意見広告に、米国内外から批判の声が上がっています。この意見広告は今月14日付に掲載されたもの。ジャーナリストの櫻井よしこ氏、元駐タイ大使の岡崎久彦氏なども名を連ねました。掲載後、元「慰安婦」、韓国紙などから批判の声が上がり、米副大統領の怒りも伝えられています。米下院外交委員会ではこの26日に「従軍慰安婦」問題で日本政府に謝罪を求める決議が採決される予定です。


 意見広告に名を連ねているのは、自民、民主、無所属の四十四人の議員です。「慰安婦」問題で日本軍による強制と関与を認めた河野官房長官談話(一九九三年)の撤回を強く主張してきた稲田朋美(自民)、松原仁(民主)の両氏から、日本会議国会議員懇談会(日本会議議連)会長の平沼赳夫氏(無所属)まで「靖国」派国会議員が勢ぞろいしています。

 意見広告は、「事実」との表題で、米下院の「慰安婦」決議案が日本軍による“若い女性への性奴隷の強要”や、“二十世紀最大の人身売買の事件の一つ”などと指摘しているのは、「故意の歪曲(わいきょく)」だと主張しました。

 さらに、「日本軍による強制を示す歴史資料は見つかっていない」「慰安婦は“性奴隷”ではなく公娼(こうしょう)である」などと述べています。

 「慰安婦」問題をめぐっては、三月に安倍晋三首相が「強制性はなかった」と国会答弁したことを機に、米メディアが注目。ワシントン・ポスト紙社説が、安倍首相が北朝鮮の拉致問題に熱心なのと対照的に「日本自身の戦争犯罪には目をつぶっている」として、「二枚舌」と批判したのをはじめ、主要各紙が社説で日本政府のこの問題での不誠実な態度をいっせいに批判していました。

 この意見広告が掲載された二日後の十六日、米下院外交委員会のラントス委員長(民主党)が、同委員会に付託されている従軍慰安婦問題に関する対日謝罪要求決議案を二十六日に採決に付すことを明らかにし、「多数の賛成で通過するだろう」と述べました。

 同決議案の賛同議員は急増し、二十二日までに、百四十五人に達しています。ラントス委員長自身も新たに共同提案者になっています。

 決議案が委員会で可決されると七月中にも本会議で採決される可能性があります。

 (ワシントン=鎌塚由美)


意見広告に賛同した議員

自由民主党

(衆院)

 赤池誠章 (比例南関東)

 稲田朋美 (福井1区)

 江藤拓  (宮崎2区)

 大塚高司 (大阪8区)

 岡部英明 (比例北関東)

 小川友一 (東京21区)

 鍵田忠兵衛(比例近畿)

 亀岡偉民 (福島1区)

 木原稔  (比例九州)

 木挽司  (兵庫6区)

 坂井学  (神奈川5区)

 島村宜伸 (東京16区)

 杉田元司 (比例東海)

 鈴木馨祐 (比例南関東)

 薗浦健太郎(千葉5区)

 平将明  (東京4区)

 戸井田徹 (兵庫11区)

 土井亨  (宮城1区)

 土井真樹 (比例東海)

 西本勝子 (比例四国)

 林潤   (神奈川4区)

 古川禎久 (宮崎3区)

 松本文明 (東京7区)

 松本洋平 (東京19区)

 武藤容治 (岐阜3区)

 愛知和男 (比例東京)

 山本朋広 (比例近畿)

 渡部篤  (比例東北)

(参院)

 中川義雄 (北海道)

民主党

(衆院)

 松木謙公 (比例北海道)

 笠浩史  (比例南関東)

 牧義夫  (愛知4区)

 吉田泉  (比例東北)

 河村たかし(愛知1区)

 石関貴史 (比例北関東)

 泉健太  (京都3区)

 神風英男 (比例北関東)

 田村謙治 (比例東海)

 鷲尾英一郎(比例北陸信越)

 北神圭朗 (比例近畿)

 松原仁  (比例東京)

(参院)

 松下新平 (宮崎)

無所属

(衆院)

 西村真悟 (比例近畿)

 平沼赳夫 (岡山3区)


日本の誇り地に落ちる

韓国紙

 オーストラリアのAAP通信は十五日、「日本の否定に慰安婦が激怒」と伝え、日本のインドネシア侵略時にジャワ島で拘束されて「慰安所」に送られたオランダ出身女性ジャン・ルフ・オハーンさん(84)の怒りのことばをこう紹介しています。

 「まったく恐るべきことです。私は怒りで身が震えています。多くの証拠があるというのに」、「私たちは強制されたのですから。日本は彼らの歴史的責任を認めていないのです。私はトラックに詰められ、家族から離れたところに連れて行かれ、売春宿に入れられて一日中、強姦され続けたのです」

 AAP通信によると、元「慰安婦」の支援団体「オーストラリア慰安婦たちの友」は声明で「生存者たちの数多くの証言は、『慰安婦』制度が報奨も賃金もまったく手にできない軍の性奴隷制度であったことを明確にしている」とのべています。

 第二次世界大戦終結まで足かけ三十六年に及ぶ日本の植民地支配を受けた韓国でもメディアから厳しい批判が出ています。

 東亜日報紙は十六日、ワシントン・ポスト紙への「慰安婦の動員に強制はなかった」とする意見広告にたいし、「米国内には強い逆風が吹いている」と報道。同紙十八日付電子版日本語サイトは、米政府内での反応をこう伝えています。

 「チェイニー副大統領は、『この広告は非常に不愉快な内容だ』と、補佐チームに広告の経緯について把握するよう指示したという」

 同じく韓国紙・朝鮮日報十六日付は、「日本の知識人の道徳水準をさらした慰安婦広告」と題する社説を掲載。意見広告は、「(慰安婦問題での)最大の被害国である韓国、中国、インドネシア、フィリピンなどのアジア各国」についての事例を完全に無視していると指摘。「日本は首相や外相をはじめとする不道徳な日本政府関係者に不道徳な国会議員、さらに知識人までが加わり、犯罪の歴史を闇に葬り去ろうとあがいている。だが、彼らがこうした行動をとればとるほど、日本国民の誇りが地に落ちるばかりだということに、気づくべきだろう」と結んでいます。



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