2007年6月28日(木)「しんぶん赤旗」

主張

「慰安婦」決議採択

「靖国」派への痛烈な批判だ


 米下院外交委員会が、「従軍慰安婦」問題で日本政府に公式謝罪を求める決議案を賛成三十九、反対二の圧倒的多数で可決しました。七月の本会議でも可決される見通しです。

 日本政府は、歴代の首相が「謝罪」しているといって採決回避を米議会に働きかけてきました。にもかかわらず米議会が謝罪要求決議を可決したのは、安倍晋三首相をはじめ過去の侵略戦争を肯定する「靖国」派が「強制はなかった」と戦争責任を否定していることへの反発の強さを示しています。安倍首相と日本政府の態度が問われます。

戦争責任の否定

 米下院外交委員会の決議は、日本軍による強制を認めた一九九三年の河野洋平内閣官房長官「談話」を「日本の官民」が「無効」にしようとしていると指摘し、日本軍が女性を「性的奴隷に強制したこと」を日本政府が「公式に認め、謝罪する」ことを求めています。

 安倍首相は「河野談話」を守るといいながら、「慰安婦」について、「強制性を裏付ける証拠はなかった」(三月一日の記者会見)とのべました。麻生太郎外相も米下院決議案が「客観的な事実にはまったくもとづいていない」(二月十九日衆院予算委員会)とのべています。下村博文内閣官房副長官は「従軍慰安婦はいなかった」(三月二十五日)とまでいいました。

 こうした言動が、米議会ばかりかブッシュ政権の反発すら招いたのです。「河野談話」は「従軍慰安婦」について、「甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた」と認め、「おわびと反省」を表明しています。それを「薄め」「無効」にすることを、アメリカをはじめ国際社会が批判するのは当然です。

 安倍首相は四月の日米首脳会談で、ブッシュ大統領や議会指導者に「河野談話」の継承と「おわび」を表明してみせたものの、日本軍の強制を否定した発言を撤回していません。そのうえ、安倍首相と同じ「靖国」派の自民、民主両党議員らは、決議を阻止しようと十四日付の米紙ワシントン・ポストに「事実」と題する「慰安婦」強制否定の意見広告を掲載したのですから、米議会内に批判が広がったのは当たり前です。

 米下院の指摘を「事実無根」だと非難した意見広告は、米議会はもちろんブッシュ政権の内部でさえ、安倍首相の「おわび」は形だけで、「日本の本音は別」だという疑念を大きくさせただけでした。

 戦後の国際社会は日本とドイツなどの侵略戦争への反省とそうした違法は許さないという合意のうえに成り立っています。ドイツのホロコーストや「従軍慰安婦」問題は議論の余地のない確定ずみの歴史的事実となっているのに、日本軍の強制はなかったなどというのは、国際社会の土台を掘り崩すことです。

 安倍首相は、戦争責任を否定すれば日米関係はもちろん、戦後日本の国際的地位さえも傷つけることになるということを直視すべきです。

心からの反省を

 安倍首相はブッシュ大統領には「慰安婦」問題で「おわび」を表明しました。しかし、強制された人々には直接謝罪していません。安倍首相は「河野談話」を守り、進んで公式謝罪を行うべきです。

 安倍首相は自らの内閣を「靖国」派で固め、教育基本法改悪や改憲など文字通り「靖国」派政治を強行しています。今回の決議は、そうした「靖国」派政治が国際的に通用しないことを示した点でも重大です。



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