2007年6月28日(木)「しんぶん赤旗」

「赤ちゃんポスト」 どう考えますか?


 〈問い〉 熊本の病院が開設した、「こうのとりのゆりかご」という名の「赤ちゃんポスト」について、どう考えますか?(東京・一読者)

 〈答え〉 この病院(慈恵病院)は、中・高校での性教育の出張講座や電話相談のなかで、妊娠した女性が一人悩み、赤ちゃんの命も絶たれてしまっている現実をなんとかしたいと、救われない命を救う一つの方法として、匿名でもあずけられる設備を設置したといわれています。

 経済的、社会的事情をもった親がゆきづまった状況に追いこまれることはあります。予期せぬ妊娠に悩む女性が身近で相談できるところはきわめて不十分ですし、婚外子や未婚の母などに対する差別・偏見も色濃く残っています。

 「何とか救えるなら」という今回の措置を、行政の側も認めているように、いちがいに否定することはできません。

 「赤ちゃんポスト」の運用から約1カ月間に、熊本市には昨年度1年分に相当する百件を超える相談があり、慈恵病院にも91件の相談があったことも、こうした事情を反映していると思います。

 本来、親が子どもを遺棄することはあってはならないことであり、「赤ちゃんポスト」のような設備を必要としない社会でなければならないと思います。

 大事なのは、国や自治体の責任で、国民が子育てに悩み、困難にぶつかったとき、必要な援助をする施策や設備を整備することではないでしょうか。

 現実には、子どもの健康や障害、育児の悩みやストレス、児童虐待などの相談・対応など、児童福祉行政の中核的役割を担う児童相談所は全国で200カ所足らずです。10代の未婚の母から生まれた子どもや、父母の離婚や遺棄された子どもなどが養育されている乳児院は120カ所程度しかありません。

 児童相談所や児童福祉施設、小児病院や保健所、子育て支援センターなど、親が育てられるような支援とそれが困難な場合に受け入れる、専門的できめ細かな相談・支援体制の整備が急がれています。

 子どもの権利条約は、親が第一義的養育責任をはたせるよう、施策の充実をはかることが締約国の責任であるとしています。児童福祉法は、国と自治体は「児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う」と定めています。

 「赤ちゃんポスト」の問題を機に、厚生労働省は4月、地方自治体に対し、出産や育児に悩みをもつ保護者への相談窓口の周知や妊娠に悩む人への相談の取り組みを充実するよう自治体に通達をだしました。通達一本で終わらせず、責任あるとりくみが求められています。(坂)

 〔2007・6・28(木)〕


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