2007年6月29日(金)「しんぶん赤旗」
米「慰安婦」決議を敵視
「靖国」派抱え問われる民主
旧日本軍による「従軍慰安婦」の問題で、米下院外交委員会が日本政府の公式な謝罪を求める決議を採択したことで、それを真っ向から否定する「靖国」派議員の特異な姿勢が浮きぼりになりました。民主党は、「(首相の)結果責任が問われる」(松本剛明政調会長)と批判しますが、同党も「靖国」派議員を多数抱えており、自らの立場も問われます。
米紙ワシントン・ポスト十四日付に、日本の国会議員四十四人が連名で「従軍慰安婦」にたいする強制性を否定する全面広告を掲載しました。米国だけでなく、アジア諸国からも批判の声が上がり、米下院での謝罪要求決議の採択を加速させる要因となったと指摘されています。この広告には、自民党議員二十九人、無所属議員二人とともに、十三人の民主党議員(参院院内会派一人を含む)が名を連ねています。
南京大虐殺も「なかった」と
十三人の多くは、三月に民主党の有志議員が結成した「民主党慰安婦問題と南京事件の真実を検証する会」(会長=渡辺周衆院議員)のメンバーです。同会の中心メンバーは、日本会議国会議員懇談会(日本会議議連)副幹事長などの役員であり、バリバリの「靖国」派。賛同議員は、民主党のすべての派閥に及んでいます。
これらの民主党議員は、国会の委員会質問などで「南京大虐殺」の事実や「従軍慰安婦」の軍による強制性を否定する発言を繰り返しています。
たとえば、日本会議議連の役員でもある松原仁衆院議員は、「事実がなかった、三十万なんていう話じゃないし、三万という話でもない。なかったんですよ」「大虐殺、虐殺はなかった、間違いなく」(五月二十五日、衆院外務委員会)などと発言しています。
しかし、日本軍による南京や周辺地域での大規模な虐殺は、元日本兵や多くの被害者の証言によって、すでに覆せない事実となっています。日本政府でさえ「旧日本軍による南京入城後、非戦闘員の殺害または略奪行為などがあったことは否定できない」(二〇〇六年六月二十二日付「答弁書」)と認めざるをえないのです。
「従軍慰安婦」についてこれらの民主党議員は、強制的な連行があったことを強く否定し、「不名誉なぬれぎぬ」だと主張。日本軍の関与・強制を公式に認め、反省とおわびを表明した「河野談話」の取り下げまであからさまに要求しています。
改憲をめざす流れの底には
民主党内の「靖国」派議員は、こうした“見解”にもとづく対応を政府に迫ってさえいます。渡辺衆院議員は、四月二十五日の外務委員会での質疑で、南京大虐殺記念館が年内にも拡張され、世界遺産登録の動きもあることに懸念を示し、「これから北京五輪や上海エキスポ(万博)で大勢の方々が世界中から訪れる」「そこに行ったら、何と日本はひどいことをしたんだ、これだけのことをしていたのかということが、まさに刷り込まれてしまう」とのべ、「対応」を急ぐよう求めました。
「創憲」の名のもとに「自衛軍」の創設や集団自衛権の容認を含む改憲をめざす民主党の底流には、侵略戦争の歴史を否定する危険な勢力が存在するのです。
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