2007年6月30日(土)「しんぶん赤旗」
内閣不信任決議案への
石井副委員長の賛成討論(大要)
二十九日夜の衆院本会議で行った安倍内閣不信任決議案に対する日本共産党の石井郁子副委員長の賛成討論(大要)は次のとおりです。
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安倍内閣と自民・公明の与党が、昨日、参院厚生労働委員会で社会保険庁解体・民営化法案と年金特例法案の採決を強行したうえ、本日の参院本会議で強行成立させようとしていることに断固として抗議するものです。
「消えた年金」問題の実態解明は緒についたばかりではありませんか。一人の被害者もださないための解決策の議論はようやく深まりはじめたばかりです。それなのに、肝心の社会保険庁を解体する法案を強行してしまって、国民の年金受給権を保障するという国の責任をどうして果たすのですか。
さらに、参院内閣委員会で審議中の国家公務員法改悪案について、本会議への「中間報告」をもとめる異例の手法を使って本会議の採決を強行し、与党の数を頼んで、一挙に成立させようとしています。議会制民主主義破壊の暴挙であり、絶対に許せません。
安倍内閣が成立して九カ月、昨年の臨時国会における教育基本法改悪、防衛省・自衛隊法改悪法案の強行採決をはじめ、その国会運営は、横暴きわまるものです。これは、わが国の議会政治史上に重大な汚点を残すものです。国会を、政府の「悪法追認機関」におとしめた安倍内閣は、もはや不信任しかありません。
今回の「消えた年金」をめぐる問題は、安倍内閣に国政を運営する能力がまったくないことを示したものです。
厚生労働省は、すでに一九九七年、「基礎年金番号」制度を導入する過程で、膨大な年金記録が誰のものかわからなくなっていることを具体的に把握していたのです。にもかかわらず、そのことを国民に知らせず放置し、深刻な事態をまねいたのです。
安倍総理は、すでに昨年末、このことを知っていながら、何ら手だてをとらず、問題の解決を先送りし、社会保険庁を解体する法案を提出したのです。
これまで管理してきた組織の解体を最優先し人員を削減してしまって、どうして国が責任をもてるのでしょうか。しかも今回の法案は、保険料の流用を恒久化し、国保証をとりあげてまで保険料の徴収を強化することを盛り込んでいます。肝心なことは、すべて今後の検討に白紙委任しているのであります。
いま国民は、定率減税の廃止による住民税増税に怒りの声をあげています。九七年の消費税率引き上げ以来の大規模な増税によって、ほとんどの人がこれまでの二倍の負担、高齢者の中には昨年の三倍、四倍もの負担になる人もいるのです。空前の利益をあげている大企業や大資産家への減税などの優遇をやめ、応分の負担をもとめるべきではありませんか。
また、「再チャレンジ」を掲げながら、低賃金、長時間労働、不安定雇用の拡大という雇用の深刻な事態にはいっさい手をつけず、さらなる雇用の流動化、非正規労働の拡大をすすめ、「ネットカフェ難民」を生み出しています。「医療難民」や「介護難民」など、きわめて深刻です。こうした貧困と格差の拡大に、安倍内閣は何らの具体的手だてもとっていないのであります。社会的弱者に冷たい政治を続ける安倍内閣は、不信任に値します。
外交政策でも失政は明らかです。
米国の下院外交委員会が、「従軍慰安婦」問題で日本政府に公式の謝罪をもとめる決議を採択したことは、安倍外交の深刻な破たんを示すものです。
安倍総理は就任直後に、侵略戦争と植民地支配を反省した村山談話と、「従軍慰安婦」問題での河野談話の「継承」を内外に表明しました。ところが三月、「慰安婦」問題で「強制性を裏付ける証拠がなかったのは事実だ」と答弁し、国際社会からきびしい批判をあびました。
日本の歴史的責任を明確な形で内外に示せない安倍総理に、日本外交の舵(かじ)取りはまかせられません。
さらに重大な問題は、安倍内閣が、閣僚の憲法順守義務をふみにじり、政権の課題として公然と憲法改悪をすすめる内閣だということです。
この間、海外での米軍戦争支援活動を自衛隊の本来任務に位置づけ、米軍再編によって米軍と自衛隊を一体化する日米同盟の強化をおしすすめています。またイラク戦争支持をいまだに反省することなく自衛隊のイラク派兵の二年延長を強行しました。自衛隊の情報保全隊による違憲違法の国民監視活動も看過することはできません。
安倍総理は、自ら強力な指示をだして、改憲手続き法を成立させ、三年後に「改憲の発議」をめざすことを参院選挙公約にかかげました。憲法九条を変えて日本を「海外で戦争する国」につくりかえようとしています。改憲へとひた走る安倍内閣は即刻退陣すべきです。
また、「戦後レジームからの脱却」をかかげ、戦後日本が培ってきた国民主権と民主主義、個人の尊厳などを全面否定しようとしていることは重大です。そのもとで改悪教育基本法と教育三法によって、国による教育の管理と統制を強化しようとしています。こうした安倍内閣に子どもたちと日本の未来を任せることは到底できません。