2007年7月3日(火)「しんぶん赤旗」

沖縄実弾演習移転10年

米海兵隊 イラク想定訓練に変質


 「沖縄の負担軽減」を口実に一九九七年、在沖縄米海兵隊の155ミリりゅう弾砲実弾演習が本土に「移転」して以来、三日で十年を迎えます。政府は「沖縄での訓練と同質・同量」だと説明してきましたが、実際は質・量ともに拡大し、イラクやアフガニスタンを想定した総合的な戦闘訓練に変質しました。(竹下 岳)


夜間演習も

 「われわれはイラクにもアフガニスタンにも行っている」。“イラクとは無関係”と繰り返してきた沖縄の海兵砲兵部隊(第一二海兵連隊第三大隊)の司令官が、実際はイラクを想定した訓練をしていると明らかにしたのは昨年一月でした。

 実弾演習は沖縄本島北部のキャンプ・ハンセンで行われていましたが、射程距離が五キロ程度しかないため、海兵隊は不満を抱いていました。

 九六年十二月のSACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)最終合意で、「沖縄の負担軽減」を口実に矢臼別(北海道)、王城寺原(宮城県)、北富士(山梨県)、東富士(静岡県)、日出生台(大分県)の陸上自衛隊演習場に訓練を「移転」。これを契機に射程距離が最大十七キロ(矢臼別)まで拡大し、海兵隊は夜間の砲撃演習や残虐兵器・白リン弾の使用などNBC(核・生物・化学)戦訓練も強行しました。

警備の任務

 二〇〇三年のイラク戦争以後、砲撃演習は新たな変質を遂げます。海兵隊は、砲座を移動する際に、敵の襲撃から部隊を防護するための機関銃訓練に踏み切りました。

 この時期から、在沖縄海兵隊機関紙「オキナワ・マリーン」では、「(砲撃演習が)イラクやアフガニスタンでの火力支援の訓練の機会を与えている」(〇六年七月二十一日号)などと公言するようになりました。

 しかも、過去一、二年の間に日本に駐留した海兵砲兵部隊の動きを見ると、実際にイラクやアフガニスタンを行き来していることが分かります。

 沖縄を拠点とする第一二連隊第三大隊は、昨年十月から今年四月までイラクに駐留。戦死者も一人出ています。

 また、同連隊第一大隊(ハワイ)A中隊などは昨年九月、東富士での実弾演習の際、車両の護衛や検問など、砲撃演習とは無関係な訓練をしていました。これらの部隊が今年に入ってイラクで警備の任務に就いたことから、訓練の意味が判明しました。

100億円投入

 これまで米海兵隊は五カ所の演習場で年四回の訓練をこなしてきましたが、イラク戦争後の〇四年一月に日出生台で予定されていた演習を中止。今年に入って二月の日出生台、六月の北富士と相次いで中止する異例の事態となりました。

 在日米海兵隊司令部は「部隊の運用上の理由」として詳細を明かしませんが、イラク戦争の長期化に伴う兵力不足が背景にあるのは明らかです。

 沖縄には六―七カ月交代で米本土から海兵隊の実戦部隊が配備されますが、今年二月に砲兵部隊が帰国した後の後継部隊(第一一海兵連隊第二大隊E中隊=米カリフォルニア州)は予定より遅れて四月までアフガニスタン、イラクを転戦していました。

 日本政府はこれまで、海兵隊の砲撃演習のため、百億円を超える税金を投入して専用施設を建設してきました。「沖縄の負担軽減」どころか、事実上、無法な先制攻撃戦争を進めるための新たな基地を提供しているのが実態なのです。



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