2007年7月4日(水)「しんぶん赤旗」

米核戦略にしがみつく歴代政権の姿勢背景に


 六十二年前、広島で十四万人以上、長崎で七万人以上の命を奪い、今なお多くの被爆者を苦しめている米国の原子爆弾投下は国際法に反する非人道的行為であり、どんな理由があっても正当化できません。

 原爆投下を「しょうがない」とした久間章生防衛相の発言は多くの被爆者を傷つけ、核兵器廃絶を目指す国際社会の努力に水を差しました。辞任は当然であり、久間氏を今日までかばい続けた安倍晋三首相の責任も厳しく問われます。

 世界で唯一の被爆国として、核廃絶の先頭に立つべき日本政府の閣僚が核兵器の使用を「しょうがない」と発言し、首相もそれを擁護するのはなぜなのか。それは久間氏のみならず、日本政府全体が“理由によっては核兵器の使用もやむをえない”=「しょうがない」という立場に立っているからです。

核武装論の台頭

 日本は米国の核戦略を一貫して支持し、「核抑止力」を中核とする日米安保体制にしがみついてきました。国連でも核兵器の「究極的廃絶」論を唱え、速やかな核廃絶を求める国際世論に背を向けてきました。核兵器は非人道兵器であり国際法違反だとの立場も明確にしていません。

 加えて、自民党内では核武装論者が台頭。昨年、北朝鮮の核実験に対して、自民党の中川昭一政調会長や麻生太郎外相から「核武装」発言が相次ぎました。

 米側は日本独自の核武装論には警戒感を示し、今年五月の日米安保協議委員会(2プラス2)の合意文書では、「あらゆる種類の米国の軍事力(核及び非核の双方の打撃力及び防衛能力を含む)が、拡大抑止の中核を形成し、日本の防衛に対する米国のコミットメントを裏付ける」として、「米国の核の傘」の意義を再確認させました。

 久間氏自身は、「(核武装発言は)しない方がいい」と述べる一方、「現在の日本の置かれた状況を考えるなら、米国の核の傘に置かれた方がいい」(〇六年十月、外国特派員協会)と主張しています。“日本の核武装はよくないが、北朝鮮に対抗するためにも米国の核兵器は必要だ”という立場です。米国の核戦略の原点である広島・長崎への原爆投下を否定しないのもうなずけます。

安倍内閣の風潮

 それでも、歴代政権で「原爆投下はしょうがない」とまで発言する閣僚はいませんでした。「自分が防衛政策をよく知っているという自負があり、自分の考えだけで発言する」(防衛省関係者)という久間氏個人の姿勢もありますが、核武装容認の暴言が相次ぎ、タガが完全に外れた安倍内閣の風潮を反映しているともいえます。

 この問題は久間氏の辞任で幕引きを図るのではなく、原爆の犠牲者の苦痛を自らのものとして感じることのできない安倍内閣全体の責任を厳しく問い続けなければなりません。(竹下岳)



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