2007年7月5日(木)「しんぶん赤旗」
久間前防衛相発言
「読売」社説は原爆神話と核抑止力論の虚構に立つのか
広島、長崎への原爆投下を「しょうがない」と講演で発言した久間章生防衛相(当時)にたいし、多くのマスメディアはその見識のなさをきびしく批判するとともに、辞任にたいしても各新聞は、「原爆投下から目をそらすな」(「朝日」四日付)などの社説をかかげました。その多くが発言は重大であり辞任は当然とするとともに、辞任にあたっての久間氏の発言についても、「心からの反省が伝わらない」(「毎日」)などときびしく批判しています。
そうした中で異常だったのは「読売」社説で、「冷静さを欠いた『原爆投下』論議」と、久間氏の発言を問題にすること自体が間違っているという非難です。その中身は、原爆投下を事実に即して議論すべきだとか、米国の核抑止力を認めるべきだということで、要は原爆投下や核兵器を保有し続ける効用を認めよということにつきます。まさに原爆投下を「しょうがない」といった久間氏の立場と、五十歩百歩といわなければなりません。
広島、長崎への原爆投下が戦争の終結を早めたなどという「原爆神話」は、戦後アメリカが原爆投下を正当化するために持ち出してきたものです。今ではその誤りが明らかなだけでなく、どんな理由を持ち出しても非人道的な兵器である原爆の投下は正当化できないというのが国際社会の常識です。「読売」社説が久間氏の発言については一言も批判しないで、久間氏の発言を問題にした側に矛先を向けているのは、国内で最大の発行部数を持つと豪語する被爆国の巨大メディアとして不見識のそしりは免れません。
核兵器の保有が北朝鮮などに対抗するために必要だという「核抑止力論」の誤りも明白です。アメリカなど核兵器保有国が核兵器の開発と保有を競い合い、あれこれの口実を設けて核兵器の廃絶に背を向けているために、核兵器が世界に拡散し、世界の平和を脅かしているのです。核兵器の保有を続けることが戦争を抑止するなどというのはまったくの虚構であり、「核抑止力論」などというのは核兵器の廃絶をさぼり続けるための口実にすぎません。この点でも「読売」の不見識は明らかです。(宮坂一男)
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