2007年7月9日(月)「しんぶん赤旗」
「景気実感を」と首相は言うが
「財界には成長、庶民には貧困」が実態
「おかげさまで正規職員が五・四半期連続で増え、失業率も九年ぶりに3・8%まで下がりました」「さらに経済を成長させ、みなさんに景気を実感していただきたい」―各党党首による八日のNHK「日曜討論」で、“逆風”のなか「実績」アピールに躍起の安倍晋三首相の口から、こんな言葉が飛び出しました。
正規雇用は減少
しかし、です。確かに数字上、「雇用」は増えていますが、肝心なのはその中身です。
首相のいう正規職員の増加は、あくまで前年同期比です。実数では、例えば総務省の最新の数字である今年第1四半期(一―三月)平均を昨年平均と比べると、十八万人減っています。
一方、非正規雇用は同じ時期に四十九万人も増えています。失業率を「低下」させた要因はここにあり、その結果、全体に占める非正規労働者の割合は、今年第1四半期で33・7%と、過去最高に達しています。
首相はさらに、「収入も給料も二年連続、三年連続と増えてきている」などと胸を張りましたが、「雇用」が増えれば、給料の総額が増えるのは当たり前。労働者一人当たりでは下がっており、厚労省の毎月勤労統計調査の最新の五月の結果でも、実質賃金は前年同月比0・6%減となっています。
労働者の実感は、「景気回復」どころではなく、首相の言い分は国民だまし以外の何物でもありません。労働者がおかれた現状は、政治の焦眉(しょうび)の課題である、正規労働者を増やすための雇用政策の転換が放置された結果です。
痛みに心寄せず
一方、規制緩和や減税の恩恵を受ける大企業は、首相がいう「経済成長」を謳歌(おうか)しています。財務省の法人企業統計では、資本金十億円以上の企業の場合、今年第1四半期の売上高は昨年第4四半期(十―十二月)を4・8%、設備投資にいたっては31%も上回っています。
みせかけの数字を持ち出して「成長」を押し売りする安倍首相の口からは、「ネットカフェ難民」「介護難民」「医療難民」など、貧困にあえぐ庶民の痛みに寄せる言葉はついぞ出てきません。
それどころか、大企業には減税の大盤振る舞いを続ける一方、労働者・国民には定率減税廃止による住民税の大増税に加え、参院選をやり過ごした秋以降には消費税増税まで狙っています。
安倍首相が推進する「新経済成長戦略」。それは、「財界は成長を、庶民は貧困を実感」するものにほかなりません。(小泉大介)
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