2007年7月12日(木)「しんぶん赤旗」
国連で「提案」と首相いうが
核兵器使用禁止や廃絶決議 6本棄権
これが久間発言の背景
安倍晋三首相は八日のテレビ党首討論で、「国連総会で、核を廃絶するという決議を日本が提案者で出しています」とし、日本が核兵器廃絶をリードしているかのように述べました。しかし日本共産党の志位和夫委員長が指摘したように、実際には政府は、核廃絶を究極のかなたに追いやる「究極廃絶」論に立っており、核兵器の使用禁止や廃絶を求める一連の国連決議に棄権しています。このような政府の立場が、原爆投下は「しょうがない」との久間前防衛相発言や、それをかばい続けた安倍首相の姿勢の背景にあります。
昨年十二月の第六十一回国連総会では、日本が提案したものも含め、主な核兵器関連決議十六本が採択され、日本は六本に棄権しました(表)。このうちテレビ討論で志位氏が紹介したのは、マレーシアなどが提案した「核兵器の威嚇または使用の適法性に関する国際司法裁判所の勧告的意見の後追い」決議(決議番号六一/八三)と、インドなどが提案した「核兵器使用禁止条約」決議六一/九七です。
「時期尚早」理由に棄権
国際司法裁は一九九六年、核兵器の使用・威嚇が「国際法や人道に関する諸原則、法規に一般的に違反する」として、核兵器について初の国際的な司法判断をした「勧告的意見」を発表しました。マレーシアなどの決議は、その重要性を確認。具体策として、核兵器の開発や使用を禁止して廃絶を求める核兵器条約を締結する交渉の開始を呼びかけるものです。ところが政府は、この交渉は「時期尚早」だとして棄権しました。
インドなどの決議は、「いかなる状況でも核兵器の使用または威嚇を禁止する」条約の交渉開始を求めています。
日本は、非同盟諸国が提案した「核軍縮」決議六一/七八にも棄権しました。この決議は「すべての核兵器保有国が、核兵器廃絶の有効な軍縮措置をとる時期が熟している」と規定。二〇〇〇年の核不拡散条約(NPT)再検討会議の最終文書で合意された「自国の核兵器の完全廃絶を達成するとの核保有国による明確な約束」の実施が重要だと強調しています。この最終文書には日本も米国も賛成しています。
ところが政府は、核軍縮に向けた措置が「すべての核兵器国が関与する、現実的で漸進的なもの」であるべきだが、非同盟決議には「核兵器国を含め」国際社会が合意できる要素がないとして棄権しました。
日本が棄権した決議は、核兵器の使用を禁止し、核保有国に核廃絶を迫る点で共通しています。
「究極廃絶」破たん明確
これに対し日本などが提案した「核兵器の全面的廃絶に向けた新たな決意」決議六一/七四は、「核兵器の全面廃絶」を表題に掲げながら、文中では「全面完全軍縮」が「究極的目標」だというだけです。二〇〇〇年のNPT会議の最終文書など核廃絶の具体的措置は何も示していません。
しかも、自らは「すべての核兵器国が関与する、現実的」な決議が実効的だと言っておきながら、安倍首相も認めたように、この日本決議に米国は賛成していません。
もともと日本決議は、核廃絶を求める国際世論を国連の場に反映させようと新アジェンダ連合などが核廃絶決議を提案したのに対し、米国も賛成できる「究極廃絶」論で米国を救済するために出されてきました。
ところが核抑止にとどまらない核先制使用政策を掲げるブッシュ政権の発足で、米国は〇一年以降、日本決議にも反対するようになりました。
日本決議は「究極廃絶」論だとの志位委員長の批判に対して安倍首相は、「具体的に軍縮を進めなければ究極の目標にいけない」と述べ、「究極廃絶」論を弁護しました。しかし政府の「現実的・漸進的」対応は、核使用戦略へ暴走する米国の前で意味を失っているというのが「現実」です。
破たんが明確な「究極廃絶」論でなく、「人類の死活にかかわる核戦争の防止と核兵器の廃絶のために実行ある措置」(「参議院選挙にのぞむ日本共産党宣言」)をとることが求められています。(坂口明)
|
■関連キーワード