2007年7月16日(月)「しんぶん赤旗」

年金制度論争と日本共産党の立場

志位委員長の記者会見(大要)


 日本共産党の志位和夫委員長が十五日、名古屋市での記者会見でおこなった年金制度問題での発言(大要)は以下の通りです。


 年金制度をめぐる論争と、日本共産党の立場についてのべます。

低年金、無年金をどう解決するかこそ要の問題

 この間、「消えた年金」問題にたいして国民の大きな怒りが広がったわけですが、その根本には、現在の年金制度そのものへの深い不信、とりわけ給付水準のあまりの貧しさへの怒りがあると思います。

 たとえば低年金の問題です。国民年金を満期四十年払い続けたとしても、給付される年金は月額六万六千円です。平均では四万七千円と、給付水準は極めて低いものです。さらに無年金者が六十万人とも百万人ともいわれ、増え続けています。この低年金、無年金をどう解決していくかこそ、年金制度問題の一番の要の問題です。

 この点で、与党の立場は、三年前に改悪された現在の年金制度を「百年安心」「安定している」と自画自賛するだけで、深刻になっている低年金、無年金の問題を解決する方策は何もないどころか、負担は年々引き上げる、給付は年々引き下げることで、これらの問題をいっそう深刻にするものとなっています。

自公、民主とも低年金、無年金問題を解決する立場はない

 では民主党はどうかといいますと、「最低保障年金」制度の導入を主張していますが、この「最低保障年金」による受給が月六万六千円になるのは四十年先のことです。いま仮にこれが導入されたとしても、月六万六千円の最低保障年金がもらえる人は、現在二十歳の人ということです。導入一年目に年金受給者になる人は、四十分の一の月千六百五十円しか出ないという制度です。ですから、現在の低年金、無年金問題を解決するといううえでは、なんの力にもなりません。

 そのことは、この前の日本記者クラブ主催の党首討論会で、小沢代表が「無年金の人にまで最低保障年金を払うものではない」とのべていることからも明らかです。

 こうして、いま、自民・公明と、民主は、国民から見て大変わかりづらい論争をしているわけですが、この論争は低年金、無年金問題の解決を真剣に考えてのものではなく、その責任を放棄しているという点では、両者に違いはないといわなければなりません。両者の「論争」は、これをどう解決するかということから始まったものでもなければ、その解決をめざしたものでもありません。

「年金財源」に消費税をあてることの矛盾と危険

 自民・公明と民主との「論争」は、結局、民主党が「最低保障年金」の財源は「全額消費税でまかなう」としながら、三年前の選挙で掲げていた「消費税の三%の引き上げ」という方針を変えて、「消費税の税率は上げない」とのべたことをきっかけにおこったものです。

 「最低保障年金」の財源を「全額消費税でまかなう」としながら、「上げない」というのは重大な矛盾であり、民主党の方針では「財源不足」におちいることは明らかです。「全額消費税」の立場にたてば、消費税増税か、年金支給額の大幅引き下げか、このどちらかしかありません。

 ここでさらに重大なことは、そうやって民主党を攻撃した自民党が、安倍首相の「消費税を上げないとは一言もいっていない」との発言、その後の党首討論での一連の発言が示すように、与党が計画している秋の税制改革で消費税を上げることを選択肢にしていることが明瞭(めいりょう)となってきたということです。政府・与党が、消費税増税の可能性があるのに、この選挙でひた隠しにしていることが大問題となっていることを強調したいと思います。

 いま、政府・与党が、「年金財源のため」という口実で消費税増税という方向に危険な暴走をはじめている。ところがその時に、民主党の立場では対抗できない。こういう状況になっています。

日本共産党の年金制度での三つの提案

 日本共産党のこの問題についての立場は、低年金問題、無年金問題など年金の貧しさを打開するために三つの提案をしております。

 第一に、緊急策としては、いま年金受給条件は二十五年掛け続けないと一円ももらえないという過酷な制度となっています。これをせめて十年に引き下げるということが必要だと主張しています。諸外国では五年、十年、あるいは数カ月というのが当たり前であって二十五年も掛け続けなければ掛け捨てになる、二十四年半では掛け捨てになる、こういう過酷な制度を設けている国は諸外国には見られません。ですから、これをせめて十年に引き下げることによって、保険料を払えば給付となって戻ってくるという信頼を回復することが緊急に必要です。

 第二に、抜本策としては、最低保障年金制度の導入にすすむべきだと私たちは主張しています。私たちが提案している最低保障年金制度というのは、当面、月額五万円からスタートしようというものですが、これは土台部分としてすべて税でまかない、その上に保険料に応じた給付をおこなうという二階建ての制度をつくるというものであります。これは、民主党の案とは違って、いますぐに踏み出し、低年金と無年金を根本からなくしていく道を開こうということです。

 たとえば私たちの設計では、国民年金で月六万六千円もらっている方は、最低保障で五万円まで保障があり、その上に六万六千円の半分の三万三千円が上乗せされて八万三千円になるという形で、年金全体が底上げされるというものです。

 第三は財源の問題ですが、消費税に頼るということは絶対にしないということです。

 私たちは、歳出の無駄の削減、たとえば道路特定財源の一般財源化、あるいは、軍事費の削減、とくに米軍への「思いやり予算」の撤廃、政党助成金の廃止など無駄づかいの削減を一方でおこないます。

 それからもう一方で、大企業・大資産家へのもうけ相応の負担を求めます。下げすぎた法人税についてはある程度まで戻します。それから大企業への減価償却制度や研究開発減税など、もろもろの優遇税制を見直します。それから証券優遇税制など大資産家向けの減税制度も見直します。さらに所得税の最高税率を引き上げる必要もあります。これらによって、もう一方で財源をつくりだします。

 消費税には絶対に頼らない。これは私たちの方策ですが、この立場こそ、もっとも国民の利益にかなったものだと確信しています。



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