2007年7月18日(水)「しんぶん赤旗」

強震動 想定外

そのとき原発で何が

避けられない耐震基準の見直し


 ほぼ直下ともいうべき近距離で起きた地震で、設計時の想定を大きく上回る揺れに襲われた柏崎刈羽原発。地震による被害の様子が少しずつ明らかになってきています。東京電力の発表をもとに、再現すると……。

表

 新潟県中越沖地震が発生したのは十六日午前十時十三分。強烈な揺れが原発を襲いました。運転中の3、4、7号機と起動操作をしていた2号機はすぐに緊急停止しました。揺れの強さが、緊急停止の基準値(水平方向で一二〇ガル、垂直方向で一〇〇ガル=ガルは加速度の単位)を超えたためです。

 その二分後、3号機に設置されている変圧器で火災が発生しているのが発見されました。炎と黒煙がテレビで放送されました。鎮火したのは、火災発見から約二時間後の午後零時十分でした。

 午後零時五十分ごろ、6号機原子炉建屋三階と中三階で水漏れが発見されました。しかし、この水に放射能が含まれているのを確認したのは午後六時二十分。漏れた水が放水口を経由して海に放出されていたと公表したのは午後十時でした。

 「午後六時三十分現在」として発表された文書に、水漏れの情報はありませんでした。この文書では、午後三時四十五分ごろ、1、2、3号機で相次いで、使用済み核燃料プールの水位が低下して警報が出ていたことが記されています。東電の説明によると、プールに水を送るポンプが止まったためで、午後四時十五分までに正常に復帰したとしています。

 地震で襲った揺れの強さはどれくらいだったのか、午後五時半に本紙が問い合わせたところ、「復旧作業を優先しており、調査中でわからない」という返事でした。それが発表されたのは午後八時ごろでした。

 明らかにされたデータは驚くべき揺れの強さを示していました。(表参照)

 これまでも、地震波を解析した結果、ある周期の範囲で、設計時に想定された揺れを上回っていた例はありました。二〇〇五年八月十六日の宮城県沖地震の際の女川原発(東北電力)、今年三月二十五日の能登半島地震の際の志賀原発(北陸電力)などです。しかし、地震直後の観測記録で、設計時の想定を大幅に上回ったのは初めてです。

 これまで電力会社は、設計時の揺れを上回る地震動が観測されても、「原発は岩盤に設置してあるから、普通の地盤よりも揺れが二分の一から三分の一になるから大丈夫」などと説明してきました。政府も、これを容認してきました。

 しかし、今回は原子炉が設置してある場所の揺れを直接測定したものです。政府も、「耐震設計基準の見直し」を表明せざるをえなくなりました。

 直近の地震で強い揺れに襲われた原発で何が起きたのか、徹底した究明が求められます。(前田利夫)


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