2007年7月20日(金)「しんぶん赤旗」
参院選の争点
日本農業再生できる党は?
日本の食料自給率はカロリー換算で40%と主要国では例がないほど落ち込んでいます。農林漁業は危機的状況を深め、国民の食の安全にも黄信号がともっています。どう再生するか、どの党がその力をもっているのか、参院選の重大争点になっています。(中沢睦夫)
財界優先の輸入自由化で荒廃
日本農業は、農業従事者の懸命な努力にもかかわらず、衰退と荒廃が続いています。歴代政府が自動車、電機など財界・大企業の利益を優先させ農産物の輸入自由化を進め、価格保障を廃止してきたからです。
一九九五年のWTO(世界貿易機関)協定を受け入れて以降、農産物輸入は22%増加し、国内の農業産出額は二兆円近く減少しました。穀物自給率に至っては28%です。
十年前には六十キロ(一俵)二万円前後あった生産者米価は一万五千円台となり、全国平均の稲作労賃は一日二千六百四十七円(二〇〇五年)です。時給にすると三百三十円で、低すぎると問題になっている労働者の最低賃金六百七十三円の半分以下です。これでは農家の担い手が育つはずがなく、三十九歳以下の就農者は一万二千人程度となっています。
日本共産党以外の政党は、WTO協定に賛成しました。農業に打撃を与えるメキシコ、フィリピンとのEPA(経済連携協定)に共産党以外の党は賛成しました。
日本農業の再生には、農産物輸出大国のアメリカや日本の大企業の利益を優先する政治の転換が欠かせません。
基幹産業として支援
共産党
国連人権委員会は「食料に関する権利」として「食料主権」(食料の確保は各国の権利)を採択しました。世界の食料需給が大変になるなか、輸入自由化一辺倒の政治を転換し、農業を国の基幹産業に位置付ける日本共産党の主張は、国際的な流れにそったものです。
食料自給率を早急に50%まで回復し、60%を目指します。主な農産物について価格支持策をとります。生産者米価は、市場価格と生産費との差額が出たときは国が補てんする不足払い制度(米国でも実施)を導入し、六十キロ一万七千円以上に見合う水準に回復させます。多面的機能も評価して、中山間地域では直接支払い制度を改善し、平場農業に対象を広げます。
三十八万ヘクタールの遊休農地は、麦や大豆、なたね、飼料米などの作付けを援助。収入が安定しない新規就農の青年には月十五万円を三年間援助する仕組みもつくります。
日本共産党は、農業を続けたい人、やりたい人はみんな応援し、「『農』ある国づくり」へと日本農業・農村の再生をはかります。これらは財界・大企業からいっさいの献金を受けとらない共産党だからできるのです。
農民連の笹渡義夫事務局長はいいます。「財界いいなりの農産物の輸入自由化一辺倒ではなく、『食料主権』を保障するルールの確立を掲げ、家族経営や集団の力を育て、農業を続けたい人、やりたい人をみんな応援するとの共産党の政策は日本の現実にあっている」
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自給率12%へと導く
自民党
「日本の農業 自民党なら大丈夫」と宣伝する自民党は、農産物輸入自由化をいっそう推進しようとしています。
安倍内閣の諮問機関で財界代表が中心になってつくられている経済財政諮問会議の調査会は、五月に農産物関税の撤廃・削減(輸入の全面自由化)などを内容とする報告書をまとめました。
農水省の試算では、農産物の関税撤廃で農業生産物は三兆六千億円減少し、米の生産額では90%減、三百七十五万人の雇用が失われ、食料自給率は12%に低下します。それについて経済財政諮問会議作業部会座長代理は「(農業が)結構残るじゃないか。いい線だ」と農業がなくなってもいいとの本音を語りました。
安倍政権は、この道に突き進んでいます。豪州とのEPA締結交渉の開始がそれです。原則関税ゼロの協定を結んだ場合、麦、牛肉、乳製品、砂糖で八千億円もの打撃をもたらします。さらに、農業輸出国のアメリカとのEPAを検討課題としています。
安倍政権が、今年から始めた「品目横断的経営安定対策」は、九割以上の農家が支援の対象外に置かれました。東北の農業者アンケートでは「評価していない35・9%」「大変不満18・5%」「まあ評価26・2%」「大変評価5・6%」(十四日付、河北新報)と不評です。
全面自由化を主張
民主党
民主党は、財界・大企業の要求する輸入全面自由化を一番熱心に主張しています。同党が〇六年十二月に発表した政策では「真の日米同盟の確立を促進するために、米国と自由貿易協定(FTA)を早期に締結し、あらゆる分野で自由化を推進する」と表明しました。
農産物の全面自由化を前提にした民主党の農業政策が農民をあきれさせています。民主党が「米がたとえ一俵五千円になってしまったとしても一万円の補償…」と訴えているからです。
「民主党は輸入自由化で米一俵が五千円に下落することを想定しているのか。自分が汗を流して作った米は正当に評価してもらいたい、というのが農家の気持ちです」というのは農民連の笹渡義夫事務局長。
矛盾する主張に自民党さえ非難します。「農産物の完全自由化↓農産物輸入量の激増↓国内生産の減少↓自給率低下」
財界は、農家への所得補償をバラまきと攻撃しています。「財界から献金をうけ、財界の意見を代弁する民主党でできるのか」と農民から疑問の声が上がっています。