2007年7月21日(土)「しんぶん赤旗」

主張

消費税増税

いのち削る庶民負担増の暴走


 安倍首相が「消費税を上げないなんて一言も言っていない」と発言したことをきっかけに、消費税増税が参院選の争点に浮上しています。

 十四日付の毎日新聞アンケートには、参院選の自民党候補者の74%が消費税を「引き上げるべきだ」と答えました。これが与党の本音です。

庶民は低福祉・高負担

 秋の税制改定で消費税増税を決める可能性があるなら直前の参院選で国民に信を問うのが民主主義です。しかし首相は「責任政党はできることしか言わない。言ったことは必ずやる」とはぐらかし、うやむやにしてやりすごそうとしています。

 「言ったことは必ずやる」。勇ましい発言ですが、「上げないなんて一言も言っていない」のだから公約違反ではないとして増税を強行するのであれば、国民をあざむく逃げ口上以外の何物でもありません。

 くらしと経済の実態を見れば消費税増税は最悪の「選択肢」です。

 定率減税の廃止などによる住民税増税が庶民を直撃しています。何より、フリーターや生活保護世帯、母子家庭をはじめ、庶民のぎりぎりの生活費にも容赦なく課税する消費税の増税は、文字通りいのちを削る暴挙です。家計消費が低迷しているときに消費への課税を強化すれば消費はいっそう冷え込み、国内の経済活動に急ブレーキがかかります。

 政府は「国民全体の『受益』が『負担』を上回る『中福祉―低負担』」を「是正する必要がある」(財政審建議)と主張しています。国民は相当の福祉を受け、しかも負担が少ないかのように描いています。

 安倍内閣の認識は、くらしの実態、実感とは正反対です。

 経済協力開発機構(OECD)の六月のリポートは次のように分析しています。「日本の貧困家庭が受ける所得移転(いわゆる「受益」)は低い割合にとどまると同時に、ほかのOECD諸国と比べると高い税『負担』をしている」。日本の低所得層の「受益」はOECD平均の六割にすぎないのに、直接税の「負担」はOECD平均の一・二倍、アメリカ、イギリスの三倍に上ります。リポートは「税制改革は低所得層の家計による税負担の割合を減らすことを目指すべきだ」と指摘しています。

 庶民は「低福祉」に耐えながら、「高負担」を背負わされています。日本共産党が主張しているように住民税増税を中止し、すでに国民が払った増税分を「戻し税」として返すなど、庶民の負担を軽減することこそ実態に合った現実的な対応です。低所得層ほど負担が重い消費税の増税など論外のやり方です。

 「国民は低負担」という政府の言い分を実態通りに言い直すなら、庶民の負担は重すぎるのに、減税に次ぐ減税の大企業と大資産家の負担は軽すぎるということになります。

逆立ち税制を正して

 民主党は消費税の「税率は現行のまま」、全額を年金財源に充てるとしています。他方で鳩山幹事長は「消費税のアップが必要ないと言っているわけではない」「数年先でも増税はありえる」と強調しています。

 税率を据え置くなら、わざわざ消費税を組み込む必要はありません。消費税を年金財政に組み込むということは、年金財源が不足した場合、消費税率の引き上げに直結させるということです。

 「庶民に増税、大企業・大資産家に減税」という「逆立ち税制」を正そうとはっきり言える日本共産党の前進こそ、自公の庶民増税の暴走をくいとめる最もたしかな保証です。



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