2007年7月26日(木)「しんぶん赤旗」
中越沖地震
被災者支援 速やかに
志位委員長が首相に申し入れ 原発対策迫る
日本共産党の志位和夫委員長は二十五日、この間の党議員団の新潟県中越沖地震現地調査、被災者と行政関係者から寄せられた要望などにもとづいて安倍首相に「緊急申し入れ」を行いました。申し入れは被災者が求める支援策の速やかな実現と、柏崎刈羽原発問題の全容解明と全国の原発の安全対策の抜本的見直しを求めています。
申し入れは、被災者支援のための緊急対策として、援護を必要とする被災者の確認や避難所に来られない被災者への食事や物資等の提供など当面の生活確保に万全を期すことを求めるほか、被災自治体への人的・財政的支援、中小業者等の再建に全力をあげること、余震や豪雨による二次災害への対策、生活と住宅の再建支援の強化などを要求しています。
また、原発の地震防災対策にかかわる要求として、地震による被害の全容解明と行政責任も含めた徹底的な原因究明、国の原子力施設における地震防災対策の点検、原子力施設の耐震基準見直しを含めた耐震性総点検などをあげています。
日本共産党はこの間、志位委員長が、十八日、柏崎市、刈羽村を訪れ、被災者を見舞い、激励。被災者と行政関係者から要望を聞くとともに、柏崎刈羽原発を視察しました。地震発生の十六日には党新潟県中越沖地震対策本部副本部長の緒方靖夫副委員長、吉川春子参議院議員団長が、翌十七日には井上さとし参議院議員が現地に入り、それぞれ被災現場の調査を行いました。
「緊急申し入れ」は、寄せられた要望やそれらの調査にもとづき行われました。
中越沖地震で志位委員長の首相への緊急申し入れ
日本共産党の志位和夫委員長が二十五日、安倍首相に対して行った新潟県中越沖地震の被災者支援と原発の地震防災対策にかかわる「緊急申し入れ」の全文は次の通りです。
去る十六日午前に発生した新潟県中越沖地震は、柏崎市内で震度六・三を記録するなど新潟県、長野県を中心に大きな被害をもたらした。亡くなった一一名をふくめ、死傷者は約一九〇〇人に及び、一二、〇〇〇戸をうわまわる住家が大きな被害を受けた。被災地は三年前の新潟県中越地震でも大きな被害を受け、再建にむけ血のにじむ労苦を強いられてきた。ようやく再建に向けた光が見えたそのときにふたたび足元をすくわれる事態に襲われた被災者も少なくない。その思いは被災自治体にとっても同様のものがある。したがって、被災者が求める支援策を速やかに実現することにより、被災者の再建への希望と展望をしめすことがなによりも求められている。
また、変圧器から出火した東京電力柏崎刈羽原子力発電所では設計値の三・六倍にも達した激しい揺れを経験し、地盤が大きく波打ち、消火用配管の損傷など六〇件を超える異常が発生した。そればかりか、空と海へ放射性物質を放出したほか、最低限度の防火体制さえ整備されていないことが明らかになった。地震による原発被害という、国民の不安が現実のものとなったものであり、事態の全容解明がつよくもとめられている。同原発の七基すべてで耐震設計の際の規定をうわまわる揺れが観測(二号機では設計値の約三・六倍)されているもとで、活断層が直下にある柏崎刈羽原発の存続を含め、各地の原発の安全対策の抜本的見直しが強く求められている。
被災者は今後の生活の不安に加え、原発の危険に怯(おび)えながら、避難生活を余儀なくされている。
被災者の避難生活の不安をなくし、一刻も早い生活の再建を支援するため、以下の事項の実現を強く求める。
被災者支援のための緊急対策について
一、当面の生活確保に万全を期すこと。
1 高齢や障害などにより援護を必要としている被災者の確認を急ぐとともに、生活支援者の配置や避難所確保(施設借り上げなどを含め)をおこなうこと。ブルーシートなども配るだけでなく屋根に張るところまでのきめ細かい支援をおこなうこと。
2 避難所については、暑さ対策やプライバシー確保、入浴の提供をはじめ、新鮮な野菜や果物の提供、洗濯機の配置などをおこなうこと。また、避難所に来られない被災者に対しても必要な食事や物資等の提供をおこなうこと。
3 高齢者や乳幼児をはじめとした健康確保に万全を期すこと。避難所だけでなく被災地域全体を対象にした健康管理や医療ケアを実施すること。
4 倒壊家屋だけでなく外見上一部損壊の家屋でも中は家具や家財が散乱している。片付け・清掃ボランティアの派遣や家財等の一時保管場所の確保なども必要に応じて実施すること。
5 健康保険の被保険者や被扶養者にたいし、療養費の一部負担金の減免をすみやかにおこなうこと。
二、災害ごみ対策に支障がないようにするとともに、水道はもちろん下水道などライフラインの復旧を急ぐこと。また、激甚災害の指定をはじめ被災自治体に対する人的・財政的支援を速やかに実施すること。
三、中小業者等の再建に全力をあげること。
1 中小業者の再建は地域経済の再建にとって一刻も放置できない事態となっている。三年前の中越地震並みの支援に限定せず被災業者の実態をふまえた支援をおこなうこと。既存債務の返済猶予や事業資金の確保などについても、被災業者にとって実効あるものとすること。
2 柏崎刈羽原発からの放射性物質放出などで地震による風評被害が拡大している。現地の実態を正確に伝えるとともに、間接被害を受けた業者に対する救済対策・支援をおこなうこと。
四、余震や豪雨による二次災害対策に万全を期し、被害の拡大を防止すること。
五、生活と住宅の再建支援を強化すること。
1 災害救助法の「住宅の応急修理」制度の活用を徹底するとともに限度額や所得制限については実態に即した運用をおこなうこと。
2 生活再建支援制度については、住宅被害の認定に関する膨大な自治体の負担を軽減すること。宅地被害も深刻であり、何よりも被災者の住宅再建(確保)を支援するとの趣旨を最大限生かす運用をおこなうこと。また、緊急に被災自治体による積極的な活用と被災者の住宅再建を直接支援できる制度に見直すこと。
3 被災者の生活再建支援のための復興基金事業の設立を速やかにおこなうこと。
4 住宅再建にたいする個人補償(公的支援)の制度にふみだすこと。
原子力発電所の地震防災対策について
柏崎刈羽原発の耐震性と地震防災対策について、政府の責任で徹底的な調査・検証と再発防止策を確立すること。
一、今回の地震による被害の全容を明らかにし、安全対策の体制づくりを怠ってきた行政の責任を含め徹底的な原因究明をおこなうこと。国際原子力機関(IAEA)が勧告した火災防護の専門チームをつくってこなかった責任を究明すること。その際、住民の不安にこたえるためにも電力会社とは切り離した第三者による調査とするとともに、結果を国民に公表すること。
二、今回の被害の実態をふまえ、緊急に全国の原子力施設における地震防災対策を総点検すること。火災防護要員が原子炉運転要員と兼務している問題など、実効性のない計画を根本的に見直し、必要な設備と要員の確保をはかること。
三、設計値をはるかに上回る地震動が記録されたことを重くうけとめ、原子力施設全体の耐震基準見直しを含めた耐震性総点検をおこない、必要な耐震補強を直ちに実施すること。また、想定震源域の直上や活断層の近隣などの危険地帯に設置されている原子力施設について、その立地のあり方を抜本的に見直すこと。
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