2007年7月31日(火)「しんぶん赤旗」
安倍改憲路線を拒否
「続投」許されるのか
「基本路線については国民に理解いただいている」―自民党の歴史的惨敗にもかかわらず、安倍晋三首相は、開票後の会見でそうのべ、続投を表明しました。
しかし、今回の参院選の結果は、「戦後レジームからの脱却」を掲げ、憲法改定の発議を公約のトップにおいた安倍首相の基本路線への痛打です。
三十日の会見で「この選挙では憲法問題について十分議論できなかった」とみずから認めたように、安倍首相は、国民に向かって改憲の中身について具体的に語ることができませんでした。
一方で、日本共産党の志位和夫委員長に、改憲のねらいが「海外で戦争すること」にあると追及されて、否定できなかったように、安倍改憲路線の危険性は選挙戦の中で浮かび上がっていました。
テレビネットワーク・JNN(TBS系)の投票後のネット調査の結果は―。
▽「安倍首相が訴える憲法改正に共感できるか」という質問に対し、「できる」22・9%、「できない」61・9%
▽「安倍首相が訴える『美しい国』づくりに共感できるか」で「できる」18・3%、「できない」63・1%
▽「『戦後レジームからの脱却』に共感できるか」では、「できる」18・3%、「できない」50・8%
安倍首相の基本路線そのものが拒否されたのです。
「改革を進め、経済を成長させ、格差をなくす」と街頭で叫んだ「構造改革」路線については、一人区での惨敗が、切り捨てられてきた地方の有権者の声を何よりもはっきりと突きつけています。首相自身、選挙結果を受けて「改革の中で痛みを感じている影の部分が表れた」と認めざるをえませんでした。
これで、なぜ基本路線が支持されたといえるのでしょうか。増税と社会保障の連続切り下げで、現在と将来の貧困の影におびえる国民にとって、また、基本政策以前の安倍首相の政権運営・問題解決能力に疑問を感じている国民にとって、安倍首相の「美しい国」は空疎に響きます。
新聞各社の出口調査では、安倍首相の退陣を求める人が「朝日」の調査で56%、「東京」で70%にのぼります。
首相は、「新しい国づくりを約束してきた。この約束を果たしていくことが私に課せられた使命だ」と繰り返します。しかし、「勝手にそんな約束をされても、そんなことはしなくて結構だ」というのが、選挙結果に表れた声です。
プロポーズを断られても、「君を幸せにすると約束した。それが僕の使命だ」とつきまとうようなもので、安倍政権にノーを突きつけた国民のいらだちは募るばかりでしょう。
内閣改造などについて問われ、「人心を一新せよというのが国民の声」(三十日の会見)と首相はいいました。ならば、だれよりもまず自分が辞めるべきです。(西沢亨子)