2007年8月1日(水)「しんぶん赤旗」

米「慰安婦」決議

参院選に続き 安倍内閣に痛打


 米下院本会議が「従軍慰安婦」問題で日本政府に謝罪を求める決議を採択したことは、参院選での歴史的大敗に続いて、安倍内閣にとって二重の痛打となりました。

世論調査でも

 参院選での敗北も、単に年金問題や閣僚の失言、不祥事が重なったからだけではなく、安倍首相の掲げる「戦後レジーム(体制)からの脱却」路線が国民から拒否されたからでした。JNN(TBS系)の世論調査では、この「脱却」スローガンに“共感できない”が過半数を占めました。

 「従軍慰安婦」問題での首相の対応も、まさに「戦後レジームからの脱却」と一体でした。“日本の戦争は正しかった”と正当化する立場から、アジアやヨーロッパの女性を性奴隷とした「従軍慰安婦」問題など消し去りたいという心情がにじみ出ていました。だからこそ首相自身が「従軍慰安婦」の強制性を否定してみせ、「靖国」派の同志である下村博文官房副長官は「従軍慰安婦などいなかった」と存在そのものを否定しようとしました。

 これが、国際的にも通用しない歴史のわい曲であることは、日米軍事同盟を強化・推進する米政府の側からも「同盟関係に破壊的影響が出る」(シーファー米駐日大使)などと批判と懸念が相次いだことで示されました。

 日米同盟を評価するラントス米下院外交委員長も三十日、「日本の一部の人々によって、歴史をゆがめ、否定したり、犠牲者を非難するゲームが続けられていることは吐き気を催させる」として、自民・民主の「靖国」派国会議員によるワシントン・ポスト紙への広告を非難しました。

 首相は、今回の米下院本会議での決議採択について「先般の訪米でわたしの考えは説明してきた。こうした決議がなされたことは残念だ」と述べ、「二十世紀は人権が侵害された時代だった。二十一世紀は人権侵害のない、世界の人々にとって明るい時代にしていきたい」と強調してみせました。しかし、訪米時に首相がとった態度は元「慰安婦」への「同情」の表明だけでした。旧日本軍が関与した戦争犯罪に「第三者」のような態度をとることは許されないことでした。まして、自らの負の歴史に目をそむけて「明るい時代」にしていくことなどできないことも明らかです。

「戦前回帰か」

 作家の保阪正康氏は参院選結果に関連して、「『戦後レジームからの脱却』を繰り返すだけでは『戦前レジーム』への回帰を望んでいるようにしか聞こえない」「首相自身の政治家としての資質や歴史認識が問われた選挙だったからこそ、ここまで負けたのだ」(「毎日」三十日付夕刊)と指摘しました。いま、国内的にも国際的にも批判にさらされている「靖国」派の路線には未来がないことを米下院の決議はあらためて示しました。(藤田健)



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