2007年8月8日(水)「しんぶん赤旗」
宇宙基本法案 どこが問題?
〈問い〉 自民、公明両党が先の国会に提出した「宇宙基本法案」には、どんな問題がありますか?(岡山・一読者)
〈答え〉 日本の宇宙開発とその利用は、1969年5月、衆院本会議で採択された「わが国における宇宙の開発及び利用の基本に関する決議」(通称、「宇宙の平和利用決議」)にのっとって進められています。日本の宇宙開発は平和の目的に限って進めるという内容で、平和の目的とは、「非軍事」(=軍事に利用しない)という解釈がとられています。
宇宙基本法案は、宇宙の平和利用決議を無力化し、宇宙開発を軍事利用できるようにしようというものです。先の通常国会に自民・公明両党が共同で提案し、継続審議になっています。
自民党は、昨年来、自民党政務調査会(政調)・宇宙開発特別委員会で国防族議員を中心に議論を重ね、「新たな宇宙開発利用制度の構築に向けて」という名の宇宙政策の論点整理を行いました。これが法案の骨子となっています。
この中で、わが国の宇宙開発は技術開発に重点が置かれ、宇宙技術の利活用を発展させる道が閉ざされたこと。そのため、防衛庁(現・防衛省)が衛星の保有・運用を行うことができないこと。現在の自衛隊の活動に照らすと、宇宙の平和利用を目的とした国会決議(宇宙の平和利用決議)が足かせになっていること。その決議を無力化するには、新たな法律を制定することが必要であること、などを主張しています。同じ内容の要求は自民党が論点整理をする以前から、経団連や、宇宙産業の業界団体である日本航空宇宙工業会から何回も出されていました。法案の基本に、経団連や業界団体の強い要求があることは明らかです。
宇宙産業の主要企業の多くは、同時に自衛隊の戦闘機や戦車などの武器を製造しているように、宇宙開発と軍需産業は表裏一体の関係にあります。しかし、日本の宇宙開発は、憲法の平和主義と宇宙の平和利用決議によって、軍事と一線を画して発展をとげ、世界的にも高い評価と信用をかちとってきたものです。
宇宙産業は日米で共同開発を進めているMD(ミサイル防衛)の受注により、市場拡大をねらっているといわれています。宇宙の平和利用という「足かせ」がなくなれば、ミサイル発射の赤外線を宇宙空間から感知する早期警戒衛星、高性能の偵察衛星、自衛隊独自の通信衛星や通信傍受衛星などの開発や保有が可能となります。宇宙における軍拡基本法案ともいえます。(直)
〔2007・8・8(水)〕