2007年8月9日(木)「しんぶん赤旗」
国連の核兵器使用禁止決議に日本が棄権 本当なの?
〈問い〉 国連で、マレーシアやインドが出した核兵器使用禁止決議に日本が棄権したというのは本当ですか?(山口・一読者)
〈答え〉 国連総会では毎年のように核兵器使用を禁止する決議案が提出されていますが、日本政府は1961年の第1回の使用禁止決議に賛成しただけで、その後はアメリカに追従し、すべて棄権しつづけています。
昨年12月の第61回国連総会では、日本提案を含め、主な核兵器関連決議だけで16本が採択されましたが、日本は、マレーシアなどが提案した「核兵器の威嚇または使用の適法性に関する国際司法裁判所の勧告的意見の後追い」決議と、インドなどが提案した「核兵器使用禁止条約」決議など、6本に棄権しました。
国際司法裁は96年、核兵器の使用・威嚇が「国際法や人道に関する諸原則、法規に一般的に違反する」とした初の国際的な司法判断(「勧告的意見」)をだしました。マレーシアなどの決議は、その重要性をふまえ、核兵器の開発、使用を禁止し、廃絶を求める条約締結の交渉開始を呼びかけたものです。ところが日本は、この交渉は「時期尚早」だとしたのです。
インドなどの決議は「いかなる状況でも核兵器の使用または威嚇を禁止する」条約の交渉開始を求めたものです。
日本政府は、非同盟諸国が提案した「核軍縮」決議にも棄権しました。同決議は、2000年の核不拡散条約(NPT)再検討会議の最終文書で合意された「自国の核兵器の完全廃絶を達成するとの核保有国による明確な約束」の実施を強調したものです。しかし、日本政府は、核軍縮に向けた措置は「すべての核兵器国が関与する、現実的で漸進的なもの」であるべきで、決議は国際社会が合意できる要素がないと、棄権しました。
日本が棄権した決議は、核兵器の使用禁止と核廃絶を核保有国に迫る点で共通しています。これに対して、日本などが提案した「核兵器の全面的廃絶に向けた新たな決意」決議は、「核兵器の全面廃絶」を表題に掲げながら、文中では「全面完全軍縮」が「究極的目標」だというだけで、核廃絶の具体的措置は何も示していません。
もともと日本決議は、核廃絶を求める国際世論を国連の場に反映させようと新アジェンダ連合などが核廃絶決議を提案したのに対し、米国も賛成できる「究極廃絶」論で米国を救済するために出されました。ところが皮肉なことに、核先制使用政策を掲げるブッシュ政権の発足で米国は01年以降、日本決議にも反対するようになっています。(坂)
〔2007・8・9(木)〕