2007年8月18日(土)「しんぶん赤旗」

フルキャスト事業停止

日雇い派遣 失業無補償

国も見逃した違法 なぜ労働者にツケ


 百七十五万人が登録する「日雇い派遣」大手のフルキャストが、違法派遣を繰り返していたとして東京労働局から事業停止命令を受け、新規の派遣ができなくなってから一週間。同社の一万二千人(一日当たり)の派遣労働者のうち半数が仕事を失うといわれており、失業補償や雇用確保が焦点になっています。


 日雇い派遣は日給仕事の派遣。低賃金で不安定雇用のため「ワーキングプア」(働く貧困層)を生み出しています。

 フルキャストは、違法派遣の是正指導を受けている最中にもかかわらず違法派遣を続けていたとして、神戸市の三事業所が二カ月、残る三百十三カ所の事業所が一カ月の事業停止命令を受け、十日から実施されました。

 同社は、「定番現場」と呼ぶ同じ派遣先で継続して働いている人は、停止期間中でも働けるが、「スポット派遣」と呼ぶ短期・断続的な仕事に就いていた人には、新たな派遣先を紹介できなくなると説明します。

何とかして

 川崎市に住む男性は、「スポット派遣」で倉庫整理や引っ越し作業に従事しています。「毎日働いても月収は十四、五万円にしかならない。仕事がなくなれば路頭に迷うしかない」と訴えます。

 「別の派遣会社で探すしかないけど、競争が激しくなる。違法派遣は会社も派遣先も分かっていたはず。国も見逃してきたのに労働者が割を食うのは納得できません」

 正社員や派遣労働者でも長期契約の場合なら、会社の責任で仕事がなくなれば、賃金の六割以上の休業手当が支払われ、解雇されても仕事がみつかるまで失業手当が支給されます。しかし、日雇い派遣労働者には、仕事がなくなっても補償される仕組みはありません。

 日雇い労働者には、日雇い労働保険という雇用保険があり、二カ月に二十六日以上働いた労働者が失業した場合、一日四千百円から七千五百円の給付が受けられます。

 給付が受けられる「白手帳」(日雇労働被保険者手帳)の発行数は、約二万八千件(二〇〇五年度)。給付総額は十二億八千万円にのぼります。

 ところが厚労省は、日雇い派遣労働者については現在、日雇い労働保険の対象外としています。フルキャストは二月、日雇い労働保険の適用事業所の申請をしましたが、認められていません。

 「長期就労でなく片手間に働くような場合は対象外だ。日雇いでも同じ事業所で長く働いていれば、一般の雇用保険の対象になる。日雇い派遣は新しい就労形態なので実態調査して判断したい」と厚労省は説明します。

共産党要求

 日雇い派遣は、一九九九年に派遣労働が原則自由化されてから急増しました。低賃金・無権利の働き方はなくしていくべきですが、百万人近くがスポット派遣で生計を営んでいるといわれており、セーフティーネットの対象外に置くことは許されなくなっています。

 日本共産党の小池晃参院議員は、三月十五日の参院厚生労働委員会で、日雇い派遣が生みだす「ネットカフェ難民」問題をとりあげ、実態調査や雇用・社会保険加入などの対策を求めました。フルキャストの事業停止が始まった十日には、厚労省に(1)仕事を失う労働者の数など実態を緊急に把握する(2)相談窓口の開設などハローワークが積極的に対応する(3)日雇い派遣労働者の失業補償制度の早急な検討を行う―の三点を申し入れました。



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