2007年8月19日(日)「しんぶん赤旗」

主張

温暖化対策

抜本策導入は“待ったなし”


 異常気象の頻発や生態系への影響などが深刻化し、地球温暖化への対策はいよいよ差し迫った課題になっています。ところが政府がこのほどまとめた報告によると、日本が「京都議定書」で約束している、二酸化炭素などの温室効果ガスを二〇一二年までに一九九〇年に比べ6%減らすという目標がこのままでは達成されないことが明らかになりました。抜本的な対策を講じることは文字通り“待ったなし”です。

見通しも対策も甘すぎる

 政府は九七年に「京都議定書」が採択されたのを受け、翌九八年に「6%削減」への具体策を示し、その後も見直しを繰り返してきました。ところがこの期間に温室効果ガスの排出は減るどころか逆に増え、〇五年度の実績では、九〇年に比べなんと7・8%も増加しました。

 今回、経済産業省と環境省の審議会が合同でまとめた報告(年末の最終報告に向けた中間報告)では、現状では「6%削減」目標の達成は困難で、追加的な対策が必要だと認めています。何度も計画の作成と見直しを重ねていながらこの結論とは、政府は、見通しも対策も甘すぎたことを、まず反省すべきです。

 政府の「6%削減」計画の一番の問題は、最も排出量の多い産業部門やエネルギー転換部門が財界の「自主」計画任せにされてきたことです。石炭や石油など化石燃料を燃やした時点で排出量を計算すると、代表的な温暖化ガスである二酸化炭素の排出量で、エネルギー・産業部門が六割以上を占めます。財界は日本の製造業のエネルギー効率は世界一で排出量はぎりぎりまで抑えているといってきましたが、エネルギー効率を上げる投資を手控えたことなどで、最近ではその根拠も失われてきました。いずれにせよ、財界の「自主」計画任せでは、政府の削減計画を達成する保証にはなりません。

 今回の政府の報告でも、エネルギー・産業部門の対策を財界任せにする仕組みは変えず、削減に効果があるといわれる排出権取引の検討も先送りしました。これでは何度見直しても、「6%削減」の目標達成は望めません。「自主」計画任せをやめ、経済界と政府の間で削減協定を結び達成責任を公的に裏打ちするなど、抜本的な対策に切り替えるべきです。

 政府は、石油や石炭を燃やす火力発電所を減らし、原子力発電所を増やせば温暖化対策にもなるとしてきましたが、原発は技術的に未完成なうえ地震などへの不安もあります。今回の報告でも、原発の設備利用率を87―88%と高く見込むことで発電による温暖化ガス排出を抑える計画ですが、相次ぐ事故やトラブルでとてもそんな高い利用率は見込めず、その分排出量が増えるジレンマに落ち込んでいます。小規模水力、風力、太陽光・熱、地熱、バイオマスなど自然エネルギーの開発・利用の目標を大幅に引き上げ、電力会社の買い取り価格も引き上げるなどの対策を講じるべきです。

国際責任果たすためにも

 「京都議定書」による温暖化ガスの削減目標達成はあくまでも第一歩で、温暖化を防ぐには、温暖化ガスの排出量を二十一世紀半ばには半分にまで減らし、安定させる必要があります。政府も「二〇五〇年半減」の目標をきめていますが、「6%削減」目標も達成できないようではその責任を果たすことはできません。

 経済システムや生活スタイルを含め、ただちに抜本的な対策に踏み出し、低エネルギー・低炭素社会への転換を目指すべきです。



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