2007年8月25日(土)「しんぶん赤旗」
北九州餓死 生活保護の受給権侵害
福祉事務所長を刑事告発
弁護士ら 「組織的犯罪だ」
北九州市小倉北区の男性(52)が生活保護の「辞退届」を強要され餓死した事件で、弁護士・司法書士・学者・市民らが二十四日、同区福祉事務所の菊本誓所長を保護責任者遺棄致死、公務員職権濫用(らんよう)罪で福岡地検小倉支部に刑事告発し、受理されました。
告発は、七月末に市と厚生労働省に提出した同事件の公開質問状に対し、“回答する予定はない”などといずれも不誠実な態度に終始したため、徹底的な事実究明を図るために踏み切ったものです。告発人は三百六十四人と四団体。福祉事務所長を刑事告発するのは異例です。
北九州市では、生活保護行政をめぐって市民が相次いで餓死や自殺に追い込まれています。憲法二五条の生存権を保障するはずの生活保護制度が、人の命を奪うものになっています。告発状は、その原因に生活保護行政に携わる公務員が、生活保護を受ける権利を奪い、保護責任を放棄した義務違反があり、その犯罪が死に追いやる犯罪に結びついていると指摘しています。
「生活保護問題対策全国会議」代表幹事の尾藤廣喜弁護士は会見で、「再び、今回のような事件が起きたことは深刻で重大だ」とのべ、責任の所在を明らかにし、事実関係の究明を求めていく考えを強調。福祉事務所長を被告発人としたことについては、「経過からして、福祉事務所全体で組織的に行われた犯罪といえる。単独のケースワーカーによってなされたものではない」とのべました。
告発に先立ち「全国会議」は、同市生活保護行政検証委員会に対し、生活保護の申請書を誰もが手に取れる場所にそなえる、広報の強化、「生存権保障条例」の制定を求める要望書を提出。餓死した男性宅を訪問し“献花”しました。
また福岡地方法務局北九州支局に対しても同福祉事務所長を被申立人とした人権侵犯救済申告書を提出しました。