2007年8月25日(土)「しんぶん赤旗」

主張

利上げ見送り

展望の見えない“対症療法”


 日本銀行は二十三日、金融政策決定会合で政策金利を現行の「0・5%前後」に維持することを決め、利上げを見送りました。二月に「0・25%前後」から「0・5%前後」に引き上げて以来、六カ月連続での据え置きです。

 日銀は利上げ見送りの理由として米国の低所得者向け住宅ローン(サブプライムローン)の焦げ付きに端を発した、国際的な金融市場の混乱をあげています。福井俊彦日銀総裁は記者会見で、この問題は日本の金融システムに不安をもたらすようなものではないとしながら、米国経済が受ける打撃への懸念を詳しくのべました。

「構造改革」が壁に

 日銀は、一九九〇年代から続けてきた異常な超低金利政策の出口を見失ってしまったようです。

 超低金利政策で国民の預金利息は大きく目減りし、大銀行のもうけや貸出金利の引き下げを通じた大企業の利益に付け替わってきました。福井総裁によると預金利息は、九一年の水準が二〇〇五年まで維持されたとした場合に比べて、三百三十一兆円ものマイナスになっています。

 空前の低金利で“激安”通貨になった円は、アメリカなどのヘッジファンド(国際投機集団)の元手となり、数十兆円ともいわれる規模で国境を超えた投機活動(円キャリートレード)に利用されています。

 日本が超低金利を続けることは、日本と世界の経済のゆがみをいっそう広げるアクセルを踏み続けることにほかなりません。

 それと同時に、円からドルに資金を流す日本の超低金利政策の継続は、巨額の貿易赤字を抱え、慢性的な資金不足に陥っている上、サブプライム問題を抱えるアメリカへのとびきりの奉仕です。

 アメリカでは政策金利の引き下げが取りざたされており、今回の日銀の決定にも、アメリカの政府や経済に奉仕する姿勢が浮かび上がっています。

 小泉・安倍政権が進めた「構造改革」路線が、金利正常化への壁をつくっています。

 弱肉強食の「構造改革」によって、大企業は過去最高益を更新しているのに、家計の所得と消費は冷え込み、中小企業の経営難が深刻になっています。政策金利の引き上げで中小企業向け貸出金利や住宅ローン金利がさらに上昇すれば、この状態を一段と悪化させざるを得ません。

 日銀は日本経済の回復が順調であると強調することによって政策金利の引き上げを図ろうとしていますが、実態に反した説明に説得力がないのは当然です。

本末転倒の物価上昇策

 他方で、日銀の利上げに対する政府・自民党の圧力にも道理がありません。

 自民党の中川秀直幹事長は、「デフレ(物価の継続的下落)脱却ができないことに日銀に責任はないのか」とのべ、利上げをうかがう日銀をけん制しました。物価が上がるように、日銀はもっと金融を緩和して資金を市場に流せという主張です。

 ぜいたく品の価格が急低下する一方で、食料品や医療費など、低所得層の支出の大きな割合を占める生活必需品の物価は上昇しています。低所得層の家計を直撃する物価の上昇を図るなど本末転倒のきわみです。

 利上げの見送りは展望のない“対症療法”にすぎません。くらしを痛めつける「構造改革」を改め、くらしを温めながら超低金利を是正する道に踏み出すことが必要です。


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