2007年8月27日(月)「しんぶん赤旗」
米印核協定めぐり緊迫
左翼が政権批判
インド
【ニューデリー=豊田栄光】米国と民生用の核技術協定を締結したインドのシン政権が大きな試練に直面しています。協定に猛反発する左翼四政党が「閣外支持の撤回も辞さない」との構えを示しています。左翼の支持を失えば、シン政権は少数与党に転落します。
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左翼最大のインド共産党(マルクス主義)=CPIM=は二十三、二十四両日に中央委員会を開いて対応を協議しました。終了後カラート書記長は、「総選挙の議論はしなかった。政府が次のステップに踏み切らなければ、それでよい」と語り、ただちに政局がらみの動きにはしない意向を示しました。
「次のステップ」とは国際原子力機関(IAEA)との査察協定のための交渉です。九月開始予定で、十一月がヤマ場になるとみられており、次の政局騒動はこの時期になる可能性があります。
協定では、米国はウランなど核燃料や原発に関する技術を提供し、インドは民生用原子炉、使用済み核燃料再処理施設へのIAEA査察受け入れを約束しています。
米国は当初、インドが核兵器を保有していることから、協定に核実験禁止と米国が提供した核燃料の再処理禁止を明示したいと考えていました。最終的には、核実験の明示的禁止条項はなく、再処理もIAEA査察で妥協しました。
シン首相は十三日の国会で、「協定は核実験を法的に規制するものではなく、自主外交も堅持する」と述べ、米国への従属ではないと強調しました。CPIMは「問題は首相の言明ではなく、政府がやっていることだ」(十四日政治局声明)と批判しました。
シン政権は二〇〇五年六月に印米軍事協定を締結、米国との合同演習の強化、武器の共同生産などで一致しました。
イランの核開発問題では〇五年九月、国連で制裁論議をしたい米国に同調しています。
CPIMは、米軍主導の世界的な核秩序の下に入れば、インドが訴えてきた核兵器廃絶の主張を撤回せざるをえなくなると懸念しています。インドは、全核保有国が参加する期限を定めた廃絶交渉を訴えています。
同時にCPIMは、核実験はインドの主権の問題だと指摘し、協定はこの点で疑問だとしています。米国務省は「インドが核実験をすれば、米国は協定を破棄できる」(報道官)と明言し、両国間の見解は食い違っています。
一方、国内世論は圧倒的に協定支持です。タイムズ・オブ・インディア紙の調査では、93%が「協定はインドの国益になる」と回答しました(二十一日付)。ヒンドスタン・タイムズ紙二十二日付によれば、「解散総選挙に反対」は65%という結果がでています。
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