2007年8月30日(木)「しんぶん赤旗」
主張
デジタル化
テレビ難民生まぬ万全の策を
四年後には、今のテレビが見られなくなってしまうというのは本当ですか。国民の間から、こんな声が上がっています。
政府が進める地上デジタル化計画は、二〇一一年七月二十四日までにアナログ放送を終了し、デジタル放送へ完全移行するというものです。デジタル放送に対応していないアナログテレビは、映らなくなります。地デジをめぐる「二〇一一年問題」は、大きくなるばかりです。
数百万人が取り残される
いまの世の中でテレビが見られなくなれば、基本的な情報から排除されることになります。まさに「テレビ難民」そのものです。
デジタル放送を見るには、デジタル対応のテレビに買い替えるか、専用のチューナーが必要です。政府は一一年までに、「デジタル受信機の一億台普及」を目標に掲げました。しかし今年六月までの普及台数は目標の二割を超えた程度です。高額なデジタルテレビへの買い替えは、それ自体、庶民にとって重い負担です。
総務省が五月に実施したデジタルテレビ購入動向アンケートでは、「今のテレビが故障したら購入」と「当面の間、購入する予定がない」を合わせると六割もが買い替えの予定がありませんでした。電子情報技術産業協会が三月に発表した「一一年アナログテレビ残存数予測」でも、デジタルテレビやチューナーなどを合わせても八千二百二十万台にしかならず、アナログテレビが千四百万台以上残ると予想しています。これだけのテレビが映らなくなるのです。
デジタル波を届ける中継局建設の問題もあります。全世帯の99%まではカバーできる見込みですが、山間部や離島など1%が取り残されようとしています。テレビの買い替えが難しい人々を含めて、少なくとも数百万人がテレビを見られなくなるのではないかといわれます。
高画質、高音質のデジタルテレビを普及させようと、デジタル化の議論が国会で本格的になったのは、一九九〇年代後半のことでした。郵政省(当時)が設置した「地上デジタル懇談会」が九七年にだした提言は、中継局の全世帯カバーと、デジタル受信機の世帯普及率85%を達成した時点で、アナログ放送打ち切りの時期を検討するという内容でした。
ところが、政府は突然、〇一年の国会で「アナログ放送打ち切り」を盛り込んだ電波法改定を提案します。審議時間は衆参それぞれ二日間だけで、「世界のデジタル化に遅れるな」とばかりに、自民、民主、公明、社民の賛成で強行します。日本共産党だけが、再検討を求めた修正案を出して反対しました。
デジタル放送を受信できる体制が整わないのに、アナログ放送を打ち切るというのは無謀すぎます。
一方的な打ち切りは無謀
海外を見ると、〇六年にアナログ放送終了を予定していたアメリカは〇九年に、一〇年終了予定の韓国は一二年にそれぞれ延期しました。イギリスやドイツ、フランスでは三年から七年かけて段階的に終了するとしています。チューナー購入を補助(アメリカ)したり、低所得者や高齢者へのチューナーやアンテナを無料で提供(イギリス)するなどの対策も講じられています。
日本共産党は、生活保護世帯や高齢者、障害者への手当てを要望しました。デジタル放送推進協会(Dpa)も政府に補助の検討を求めています。デジタル放送が行き渡る条件が整うまで、アナログ放送打ち切りは見直すことが必要です。
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