2007年8月31日(金)「しんぶん赤旗」

原爆症認定

現行基準の廃止提言

自民小委 控訴取り下げも

被爆者と世論が動かす


 原爆症認定集団訴訟で六度にわたって実態にあわないと指摘されてきた厚労省の原爆症認定基準について廃止するよう求めた提言を三十日、自民党原爆被爆者対策に関する小委員会(委員長・戸井田徹衆院議員)がまとめました。


 参院選挙の惨敗をうけて安倍晋三首相は被爆者に見直しを表明する一方、敗訴した原爆症認定訴訟で控訴するなど矛盾した態度をとり、怒りをかっています。提言は「いかなる理由、状況があろうとも原爆投下は認められない」と表明。原爆症と認定された被爆者が全体の0・8%約二千二百人しかいないことを指摘し、早期救済を求めています。長年にわたる被爆者・国民の運動が動かしたといえます。

 現行の原爆症認定基準は、推定した被ばく放射線量をもとに発症原因確率を計算し、認定しています。被爆の実態を反映したものではなく、各地裁判決では「『発症原因確率』は判断の一要素にしかすぎない」と機械的適用を戒めていました。

 提言は、現行方式を廃止し、厚生労働省が設置する専門家会議で認定基準見直しについて三カ月以内に結論を出した上で、国が敗訴した原爆症認定集団訴訟の控訴取り下げを求めています。

 提言は、現行認定方式について「基本的に(原爆投下時の)初期放射能しか勘案していない」と指摘。科学的知見にもとづき残留・誘導放射能などの影響を十分加味した基準に見直すことを求めています。認定に際して、爆心地からの一定の範囲内の被爆者で原爆特有の典型症例を発症していれば「格段の反証なき限りは認定を行う」との原則を打ち出しました。

 基準見直しのための専門家会議には被爆者の意見を代弁する専門家を加えるよう求め、三カ月以内に結論が出なければ、与党の意向を最大限尊重し、早急に認定範囲を拡大するとしています。

 原爆症認定を審査する厚労省の原子爆弾被爆者医療分科会は廃止し、被爆者代表や残留放射能の専門家などを加えた中立的な審査機関を創設、被爆者救済の観点に立った認定を提言しています。


早急に抜本改善を 被団協

 原爆症認定のあり方の見直しを求めた自民党・小委員会の提言について、日本原水爆被害者団体協議会は三十日、「われわれの要望をくみ上げたもの」とのコメントを発表しました。

 厚生労働省に対し、「提言を真摯(しんし)に受け止め、一日も早く被爆者の要求に応える原爆症認定制度へ抜本的な改善を行い、高齢化する被爆者の援護を実現することを望む」と求めました。

 「与党原爆被爆者対策に関するプロジェクトチーム」での今後の議論については、「早期に、被爆者の実態に即した成果が得られることを期待する」と要望。全国の原爆症認定訴訟の原告二百八十一人のうち四十七人が死亡しており、「高齢化した原告や被爆者には残された時間は少ない」と強調しました。



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