2007年9月2日(日)「しんぶん赤旗」
主張
政治とカネ
言葉の軽重が問われている
「出るわ、出るわ」とあきれさせられるばかりです。身ぎれいになって出直したはずの安倍改造内閣だというのに、閣僚の「政治とカネ」の問題が続出しています。
改造前の内閣で事務所費や光熱水費など政治資金の不明朗な処理が国民の怒りの的となっただけに、安倍晋三首相は内閣改造で「国民の政治への信頼の回復」をかかげ、「説明できない人はやめてもらう」と断言しました。それがこの体たらくです。安倍首相自身の言葉の軽重が問われています。
説明できぬなら去れ
安倍首相が参院選後の内閣改造に一カ月もの時間を要したのは、新たに任命した閣僚のなかから再び政治資金にかかわる疑惑が噴き出せば政権の命取りにもなりかねないと、閣僚候補の身辺を洗う「身体検査」を入念にしたからだといいます。
ところが、改造内閣がふたを開けたとたん▽組閣当日に過去にさかのぼっての政治資金収支報告書訂正を届け出た岸田文雄沖縄・北方担当相▽地元の事務所の建物を不動産登記していなかった額賀福志郎財務相▽国会の議員会館に資金管理団体の主たる事務所を置きながら過去三年間で三千万円もの事務所費を計上していた高村正彦防衛相▽農水省所管法人から補助金を受けている団体から不適切な献金を受けていた遠藤武彦農水相…という具合です。
遠藤農水相が、自らが組合長を務める農業共済組合が補助金を不正に受け取り返還を求められていたのに、それには口をぬぐって大臣に就任していたなどというのは言語道断の極みで、「身体検査」が機能していなかったことを示しています。
首相は、前内閣で閣僚の疑惑が相次いでもまともな説明を求めずかばい続け、そのこと自体が国民の強い不信をかいました。今度も疑惑閣僚はまともな説明をせず、首相からの責任追及も受けていません。これでは「辞めてもらう」という発言も、最初から国民を欺くためのものとしか受け止められません。
だいたい改造内閣の顔ぶれそのものが、首相の言葉を裏切るものになっています。伊吹文明文科相、甘利明経産相の留任です。
両大臣はいずれも、改造前の内閣で巨額の事務所費問題が発覚したのに、領収書類を開示し説明を尽くすべきだという世論に背いてきた人物です。それをあえて留任させたということは、両大臣の無責任な対応をあらためて安倍首相が容認し、今までどおり「何の説明もせずに居座っていいですよ」というお墨付きを与えてやることにほかなりません。
これでは結局、参院選の惨敗で「反省すべきは反省する」といった安倍首相が、なんの「反省」もしていないこと、「反省」すべきことが何かもわかっていないことになります。あまりに国民の意識とずれたこの内閣自体が、早晩立ち行かなくなることは火をみるよりも明らかです。
国会は解明求めよ
新閣僚の疑惑が噴き出すのと時を同じく、自民党の玉沢徳一郎衆院政治倫理審査会会長(元農水相)の領収書改ざん問題が発覚しました。詐欺行為にも近い不正な報告をしていた人物が、「政治倫理」の名を冠する国会の正規の機関を代表する立場にあったことは、倫理への国会の責任をあらためて問うものです。
参院選で自公政権に厳しい審判を下した国民の選択を、腐敗政治の一掃に実らせなければなりません。安倍政権に疑惑解明を強く迫ることが、国会の重要な責務です。
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