2007年9月5日(水)「しんぶん赤旗」

米大統領・イラク訪問

増派批判をかわす

“治安改善”州で「成果」強調


 【ワシントン=鎌塚由美】イラク増派作戦についての議会への報告が一週間後に迫るなか、ブッシュ大統領は三日、イラク西部アンバル州のアサド米空軍基地を電撃訪問しました。治安悪化が続くバグダッド周辺などではなく、“治安改善”の数少ない例である同州を選んだことで、成果を印象づけ、増派批判をかわそうとする姿勢が浮き彫りとなりました。


地図

 ブッシュ大統領の電撃訪問は、侵攻以来三度目。バグダッド西方百九十キロの砂漠の中の米軍基地を訪れました。アンバル州は、バグダッドと並ぶ増派作戦の焦点で、武装勢力と部族指導者が米軍に協力し、アルカイダ掃討が効果をあげているとされます。

 ブッシュ大統領は基地内で演説し、「かつて失った陣地として見限られたが、今ではイラクのなかで最も安全な場所の一つだ」と強調しました。同大統領は、駐留米軍の規模に関する決定は「現場の軍司令官の冷静な評価が基礎となる。メディアの世論調査の結果に神経質な反応を示すワシントンの政治家ではない」と述べ、削減・撤退を求める米議会からの批判をけん制しました。

 ブッシュ大統領は現地で、戦況について会議を主宰しました。同会議には、ゲーツ国防長官、ライス国務長官、ペース統合参謀本部議長、ファロン中央軍司令官、ハドリー大統領補佐官(国家安全保障担当)らが出席。

 イラクでこのような会議が開かれるのは初めてで、ブッシュ大統領は、記者団に対し、現地のペトレアス司令官とクロッカー大使から「(アンバル州で)現在みられる成功が続けば、同様の治安レベルを少ない米軍で維持することが可能だ」と説明を受けたと語りました。

 ニューヨーク・タイムズ紙(四日付、電子版)は、今回の訪問には「明確な政治的目的」があり、「ブッシュ大統領のいう最近の成功を称賛し治安安定のみが米軍撤退を可能にすると主張することで、撤退を求める反対派の圧力を阻止」することを狙った訪問だと指摘しました。

 米メディアは、ブッシュ氏が、アンバル州を「成功」例としていることについて、同州がスンニ派が大多数の地域であり、宗派間暴力が激化する他の地域との違いを指摘しています。ニューヨーク・タイムズ紙は、ワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)の研究員の言葉を引用し、アンバル州は、イラクの他のモデルではなく、「例外」だと指摘しました。



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