2007年9月6日(木)「しんぶん赤旗」
ソマリア攻撃加担か
テロ特措法 給油の米艦隊出動
海自
テロ特措法に基づいて米艦船などの支援のためにインド洋に派兵されている海上自衛隊部隊が、今年一月の米軍によるアフリカ・ソマリア攻撃に加担した疑いが浮上しています。給油など海自の支援対象となっている米艦船が、この攻撃に参加していたもの。テロ特措法が、地球規模の米軍支援を可能にする報復戦争支援法であることを裏付けています。
米軍は一月七日、「対テロ戦争」の一環としてソマリア南部を空爆し、多数の民間人が犠牲になりました。
中東を作戦区域とする米中央海軍は、「(国際テロ組織)アルカイダや他のテロ組織が海を潜在的な逃走ルートとして使用するのを防ぐため」(米海軍ニュース一月五日付)、米軍主導の多国籍任務部隊CTF150をソマリア沖に展開させました。
CTF150は、海自が燃料や水などを提供し続けている米、英、パキスタン、ドイツ、フランス、カナダなどの艦船で構成されており、オマーン湾、北アラビア海、アデン湾、紅海などでの「海上治安活動」を任務としています。
さらに、CTF150は一月以降も「海賊対策」などの理由でソマリア沖を重視しています。海自が八月に作成した資料でも、「主な給油ポイント」としてソマリア沖の海域が明示されています(地図)。ソマリア情勢に対応して、海自の活動が同海域に移動している可能性があります。
政府は、「運用上の理由」で海自の活動内容を明らかにしていません。
「対テロ」を口実にした米軍の一方的な対ソマリア攻撃に対しては国際社会から強い非難の声が上がり、米議会でも攻撃の根拠をめぐって議論になりました。
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解説
テロ特措法と海自の活動
「復興」と無縁の戦争支援
二〇〇一年九月十一日の米同時多発テロ事件を受け、ブッシュ米政権はアフガニスタンへの報復戦争を宣言し、地球規模の「対テロ」戦争に踏み出しました。
テロ特措法は米国の「対テロ」報復戦争への地球規模の支援を目的としたものですが、政府は、「アフガン復興」への協力を大義名分としてきました。防衛省の広報資料でも、「アフガニスタンを再びテロの温床としない国際的な努力を継続」すると宣伝しています。
しかし、対アフガン戦争開始以来の六年間、アフガンでも全世界でもテロはいっそう拡大してきました。この六年間で自衛隊がやってきたのはアフガン復興とは無縁の、米国主導の報復戦争への支援です。
ソマリアをはじめ「アフリカの角」と呼ばれる地域は国際テロ組織アルカイダの拠点の一つとされ、防衛省もソマリア周辺とアフガンの間のテロ勢力の移動を想定。それを阻止する「海上阻止作戦」(MIO)に参加している各国艦船への給油を行っていると説明しています。
しかし、「海上阻止作戦」が成果を挙げていないことは、アフガンの現実が証明しています。
海上自衛隊の活動はこれまでも、テロ特措法からも逸脱するイラク戦争支援の色合いが濃厚でした。実際、〇一年十二月以来、海自が提供してきた艦船用燃料四十八万キロリットルのうち約65%にあたる三十一万キロリットルは、イラク戦争で米軍が「大規模戦闘終結」を宣言した〇三年五月までの時期に集中しています。
イラク戦争に向かう途中の米空母キティホークと随伴艦二隻がイラク戦争直前の〇三年二月に海自から燃料を受け取ったことは、米軍と自衛隊が公式に認めています。
米軍はペルシャ湾を中心とするインド洋で「対テロ」と対イラクの作戦を一体的に行っており、現場の海自司令官も、「提供した燃料を何に使っているか分からない」という状況です。加えて、対ソマリア作戦への支援の疑い。自衛隊は「テロ根絶」とは無縁の、米軍がインド洋の制海権を握るための活動の一端を担っているという印象を強く持ちます。(竹下岳)