2007年9月6日(木)「しんぶん赤旗」
これが日亜の偽装請負
朝礼も一緒 製造ライン混在 全業務を指示
想定問答集作製し隠ぺい工作を指示
偽装請負を告発され、直接雇用を約束していた日亜化学(徳島県阿南市)が、“そんな約束はしていない”と開き直り、これに「世間をあざむく態度は許されない」と批判の声が上がっています。いったい同社は、どんな偽装請負をした責任が問われているのか、改めて見てみると――。
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「かねてより認識し、改善を行ってきた」
日亜化学は八月三十日、直接雇用の合意などなかったとうそぶきながら、同社の製造ラインが偽装請負の状態にあったことを、日本共産党の調査団に対して認めざるを得ませんでした。
同社の偽装請負の実態が、徳島労働局に告発されたのは昨年十月。
申告したJMIU(全日本金属情報機器労組)日亜化学分会代表の島本誠さん(34)は、「日亜化学ではずっと偽装請負が続けられていました」と指摘します。
島本さんは、請負会社・シーツービーテックに雇われ、日亜化学の製造ラインで二年四カ月働いていました。勤務は、(1)「日勤」(午前八時から午後五時)(2)「前夜勤」(午後五時から午前一時)(3)「後夜勤」(午前一時から午前八時)の三交代。
教えることも
請負なら、日亜とは独立して仕事をしなければいけないのに、混在して働いていました。日勤は日亜の社員二人と請負二人の四人。夜勤は日亜一人と請負一人の二人体制でした。島本さんは「日亜の社員に仕事を教えることも常でした」と言います。
業務の指示はもちろんのこと日亜の指示ですべて働かされていました。
朝礼は、食堂で日亜社員と一緒に始まり、日亜の製造ラインリーダーの指示で製造を開始。昼休みと午前と午後に一度ある休憩も指示を受けて二手にわかれてとります。
ラインの稼働・停止もすべてリーダーの判断で指示され、残業やその日の製造の終了、完成製品を集計した日報のチェックまですべてリーダーの指揮・命令がなければ回らず、実態は明らかな派遣労働でした。
しかも、日亜化学は偽装請負を是正するどころか、徳島労働局の監査を逃れるため、隠ぺい工作まで労働者に指示していました。島本さんは告発前の一昨年、予定される監査に備え、監督官に偽装請負を見破られないようごまかす想定問答集を請負会社から示されました。
「誰から指示を受けて作業をしているのか」と聞かれたら、「○○から指示を受けている」と答えること―。
「何故、他の会社の人間と作業しているのか」との問いには、「教育を受けている or メンテナンスをしてもらっている」―。
この二つの質問以外には○○に聞いてほしい、と答えるよう指示していました。「間違っても、日亜の人から指示を受け、一緒に作業しているとは言わないように」と念を押しました。日亜化学が、請負会社と共謀して労働者に口裏合わせを強要していたのです。
給与半分しか
偽装請負のもとで、島本さんら請負社員はわずか二カ月の雇用契約を繰り返す不安定雇用に置かれていました。日亜の社員と同じ仕事をしていても、年収は二百四十万円しかなく、日亜化学の二十代社員の半分しかありませんでした。
日亜社員が「あいつはクビだ」との一言で、請負会社を雇い止めにされることもありました。
日亜化学はこうして、派遣法では一年(当時、現在は三年)を超えて働かせてはならない派遣労働者を、何年間にもわたって低賃金で働かせ続けてきたのです。
長期雇用こそ
これを是正するには、派遣法にもとづき、安定した長期の直接雇用に切り替えるしかありませんでした。ところが、日亜化学は、告発されたときは直接雇用すると表明していたのに、実際にやったことは、三年働いた請負労働者に通常の中途採用試験の受験資格を与えただけで、選別採用するものでした。
日亜化学が偽装請負を告発された当時、三年に達した労働者だけでも二百五十一人いましたが、採用されたのは三十一人。告発した当人の組合員は一人も採用されていません。派遣法で同社に課せられているのは全員に直接雇用を申し込む義務であり、選別採用する権利などありません。
柳沢伯夫・前厚生労働相は、「必ず、長期雇用を申し込まなければならない義務がある」と答えています。
さらに、組合員は偽装請負を告発した直後に仕事を奪われた状態が続いています。告発者に対する不利益な取り扱いを禁じた派遣法にも違反しています。法律にも社会的責任にも背を向ける日亜化学の姿勢が問われています。
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