2007年9月12日(水)「しんぶん赤旗」

アフガンの6年

外交官「外歩けぬ」

戦争でテロなくせない


 二〇〇一年の9・11対米同時テロ事件への報復として始まったアフガニスタン「対テロ」戦争は、現地に大混乱をもたらし、テロを拡散させています。政府は、テロ特措法に代わる新法など、この米軍主導の戦争への支援を継続することを狙っていますが、米軍支援はテロ根絶とは無縁です。(坂口明)


■勢力一掃失敗

 「カブールの日本大使館員は、移動する場合は防弾車両を使い、公務以外は外出禁止です。外を歩くことは認められていません」―二年間のアフガン勤務を終えて帰国したばかりの元大使館員が七月に都内で開かれた会合で語ると、会場から驚きの声が上がりました。

 9・11テロの首謀者とされる国際テロ組織アルカイダをかくまってきたとして、武装勢力タリバンの政権が米軍の攻撃で打倒された後、国連も仲介してカルザイ政権がつくられました。その後さまざまな復興支援が実施されてきたのに、一番安全であるはずの首都の治安が、このありさまです。それは「対テロ」戦争が完全に破たんしているからです。

 同国では、アルカイダとタリバンを掃討する米軍主導の戦争が開始された後、新政権下の治安確保のため国際治安支援部隊(ISAF)が組織されました。ところが六年間戦争を続けても、アルカイダもタリバンも一掃されていません。

 アルカイダについて、米政府の情報機関を結集した国家情報会議(NIC)は七月、「アルカイダは米本土攻撃能力の主要要素を保持・再生し、地域的テロ集団との協力を強め、能力を向上させている」「アルカイダは依然として米本土にとって最も深刻な脅威となっている」とする報告書を提出しました。

 これは、9・11以降の対アルカイダ報復戦争が、米国の観点からみても「成果」を挙げられなかったと自認したに等しいものです。指導者のビンラディンやザワヒリは、つかまらないままです。

■復活タリバン

 一度は政権から追放されたタリバンも同国南部や東部を中心に復活を遂げ、テロを繰り広げています。八月に国連薬物犯罪事務所(UNODC)が発表した報告は、同国で急増するアヘン栽培が、タリバンなど反政府武装勢力の資金源になっていると警告しています。

 外国軍の誤爆で一般市民の犠牲が増えるもと、それへの怒りに乗じて、イラク型の自爆テロが増えています。一九七九年のソ連侵攻から三十年近く戦争の続く同国ですが、自爆テロはこれまで見られませんでした。それが〇六年には百三十回を超え、前年の六倍となりました。

 今年六月には、イラクで装甲車を破壊するために使われてきた成型さく裂爆弾(EFP)の使用が初めて確認されました。

■深刻さ認める

 「問題の深刻さと必要とされる時間を過小評価していた。貧困・雇用問題が未解決のまま、治安問題、麻薬、汚職で、これまでにない挑戦に直面している」―米国に支えられるカルザイ政権自身が、一月の支援国会議に提出した文書で、事態の深刻さを認めています。

 経済は破たん状態で、平均寿命は四十五歳と世界最低水準。戦争とテロの悪循環や干ばつで生活できないため、推定人口三千万人の国で、パキスタンとイランに逃れる難民は三百五十万人。推定十三万人が国内避難民となっています。

 国連事務総長が三月に発表したアフガン情勢に関する報告は、政府が不適切な人物を任命する、部族など支配的な社会・政治集団に属さない人々が無視されるなど「国民の疎外」が起き、それが「反政府勢力の再活性化の背景になっている」と指摘しています。

 アフガンの現実は、アフガン「対テロ」戦争がテロ根絶と無縁であることを、何よりも雄弁に証明しています。


日本共産党各国に書簡

「法の裁き」で解決を

 9・11事件が起きると、テロ問題には戦争でなく法的手段で対処せよとの声が世界中で起こりました。日本共産党は世界各国政府に対し二度にわたって書簡を送り、報復戦争に訴えれば事態の悪化しかもたらさないと訴えました。

 最初の書簡は、テロ根絶には軍事力による報復ではなく「法にもとづく裁き」が求められていると訴えました。第二の書簡は、テロ勢力とのたたかいを、一部の国による戦争拡大の道から、国際社会の責任による「裁き」の道に転換すべきだと提案しました。

 アフガンの混乱は、法的・警察的に対処すべきだったテロ問題に、軍事力で対処したために引き起こされました。いま国会で大問題になっているテロ特措法・新法問題では、こんな間違った戦争に日本が加担し続けるのかどうかが問われているのです。


■アフガン戦争関連年表

1979年

  12月 ソ連軍がアフガニスタンに侵攻し、カルマル政権樹立

1989年

  2月 アフガニスタンに駐留していたソ連軍が撤退完了

1998年

  9月 タリバンがほぼ全土を支配下におく

2001年

  9月11日 対米同時テロ

    16日 米国が自衛隊の後方支援活動を要請

    17日 日本共産党が各国政府首脳あてに書簡

  10月5日 テロ特措法案を提出

     7日 米軍がアフガニスタン空爆を開始

    11日 日本共産党が各国政府首脳あてに第2の書簡

    29日 テロ特措法成立

  11月9日 海上自衛隊の艦船3隻がインド洋に向け出航

  12月7日 タリバンが最後の拠点カンダハルを撤退し、政権崩壊

    22日 暫定行政機構が発足し、カルザイ議長が就任

2006年

   5月 タリバンが攻勢に出始め、アフガニスタン南部や東部で米軍などを攻撃

  11月1日 テロ特措法が3度目の延長



■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp