2007年9月13日(木)「しんぶん赤旗」

欧米諸国の放送制度は?


 〈問い〉 NHKは受信料をとっていますが、欧米諸国の放送制度はどうなっていますか?(岡山・一読者)

 〈答え〉 放送事業体は、受信料を主要な財源とする公共放送と、国の直接管理のもと、税金による政府資金で運営する国営放送、広告(CM)料に負っている民間放送(商業放送)の三つに分けられます。

 欧米諸国の放送制度は、公共放送と商業放送の二元制が多数です。アメリカは8割が商業放送で、残り2割の多くが地域公共放送で、寄付や視聴料、政府補助などで運営されます。

 フランスの公共放送には05年に視聴覚受信料という名の税金が創設され、受信料は住民税徴収の際に一括して徴収されるようになりました。ドイツ、イタリア、スイスなどの公共放送は受信料以外に広告料収入を得ています。

 視聴者の受信料が事業収入のほとんどを占めるNHKとイギリスのBBCは、本来のあり方を維持している代表的な公共放送といえます。政府や財界、特定の団体の干渉を受けずに放送することができます。

 BBCの場合は受信許可料といいます。支払いが法律で義務付けられ(支払い義務制)、払わないと罰則があります。BBCは、過去に何度か民営化の危機がありました。ブレア政権ではイラク戦争における政府の情報操作をめぐる報道に絡み、BBCの解体が叫ばれました。BBCは「真実と正確さ」「独立性」など自らの価値を前面に出すことで国民の支持を築き、危機を乗り越えました。その結果、受信許可料納入者の1割が倍額の支払いを申し出たといいます。

 一方、NHKの場合は「放送法」で、国民がNHKと受信契約を結ぶことを義務づけています(契約義務制)が、受信料についてはNHKの放送受信規約に定められ、不払いへの罰則はありません。各国の公共放送がほとんど例外なく支払い義務制をとるなかで、日本の契約義務制は視聴者の信頼を支えにした類例のない制度といえます。

 受信料制度は、1950年制定の「放送法」で導入されました。戦前のNHKが国家管理に組み込まれ、国営放送の役割を果たしたという苦い経験を繰り返さないために、視聴者主権の理念の上に立って制定されたのです。当時、郵政官僚として放送法制定にかかわった荘宏氏は、著書でこう述べています。

 「(支払い義務制では)受信者は単に金をとられるという受身の状態に立たされ、自由な契約によって、金も払うがサービスについても注文をつけるという心理状態からは遠く離れ、NHKとしても完全な特権的・徴税的な心理になりがちである」

 政府は戦後の放送法制を解体し、放送法に受信料の支払い義務を盛り込もうとしています。与党内で調整がつかず4月、国会に提出した放送法改定案では見送られました。(板)

(参考文献・NHK放送文化研究所編『データブック世界の放送2007』、松田浩『NHK』、荘宏『放送制度論のために』)

〔2007・9・13(木)〕


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