2007年9月14日(金)「しんぶん赤旗」

主張

「集団自決」検定

日本軍強制の否定を許さない


 高校教科書の文部科学省の検定で、沖縄戦での住民の「集団自決」について日本軍の強制にかんする記述が削除されたことに抗議し、検定意見の撤回を求める沖縄県民大会が二十九日に開かれます。

 沖縄戦で犠牲となった十二万人の県民のなかに、日本軍による県民虐殺や日本軍の強制による「集団自決」があったことは明白な事実です。仲井真県知事や自治体、議会、地域諸団体がこぞって参加する超党派の県民大会を成功させることが、歴史のねじまげを許さない県民の意思を政府につきつける力になります。

体験者の証言を無視

 太平洋戦争末期の沖縄戦の特徴は、戦闘による犠牲だけでなく、日本軍が県民を死に追いやったことです。

 親兄弟などが日本軍が配った手りゅう弾や、かま、棒で互いに殺しあった「集団自決」は、日本軍の強制によるものです。従来の教科書が「集団自決」について日本軍の強制があったと書いてきたのは歴史の事実にたった当然の記述でした。

 文科省が、「現時点では軍の命令の有無についてはいずれとも断定できない」(四月十一日衆院文部科学委員会、銭谷文科省初等中等教育局長)というこじつけで日本軍の強制にかんする記述を削除したのは、沖縄戦を多少でも知る者であれば許され得ないことです。沖縄県と県下四十一自治体の議会がすべて、今回の検定に「到底容認できるものではない」と抗議したのはそのためです。

 文科省の検定方針には、安倍首相をはじめ過去の侵略戦争を肯定し、日本軍の行為を美化する「靖国」派の意向が反映しています。「靖国」派の「新しい歴史教科書改訂版」の監修者と同じグループで活動していた経歴をもつ文科省の教科書調査官を、政府が教科書検定にかかわらせたことでもあきらかです。

 日本軍による「集団自決」の強制は、どんなにごまかそうとしてもごまかせることではありません。

 座間味島(ざまみじま)では、対米戦争完遂の誓いを忘れさせないため国家行事のたびに住民を集め、軍幹部が米兵に捕まる前に「玉砕すべし」と訓示し、阿嘉島(あかじま)でも「いざとなったらいさぎよく玉砕するように」と徹底していました。渡嘉敷島(とかしきじま)でも同様で、同島に駐屯した陸軍海上挺進(ていしん)第三戦隊の皆本義博元中隊長も大阪地裁で行われている「集団自決」をめぐる裁判で、「赤松嘉次郎隊長あるいは代理が参加し(訓示は)あったと思う」と認めています。貴重な手りゅう弾を住民に配ったことも「集団自決」強制の証しです。

 許せないのは、悲惨な体験者の証言を安倍政権がいっさい無視していることです。「従軍慰安婦」問題でも同じ態度です。被害者の直接の証言を聞かないのは、歴史の事実を認めることをおそれているからです。当時の日本軍幹部の言い分だけをとりあげて事実をねじまげるのは本末転倒です。

うそは教えるべきでない

 日本軍が侵略した南京では「大虐殺はなかった」、「従軍慰安婦」問題では「日本軍が強制した証拠はない」、沖縄戦では「集団自決」を強制していないと「靖国」派が主張するのは、侵略戦争と日本軍の行為を正当化するためです。こうしたうそを教え込むことは、若者を戦争の道においこんでいったかつての誤りを再び招来しかねません。侵略戦争を正当化し、海外で再び戦争する態勢づくりをすすめるあらゆるくわだてを阻止するとりくみが重要です。



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