2007年9月17日(月)「しんぶん赤旗」
介護・医療巡り全国の集い
医療難民11万人生む
療養病床削減 日医会長が警告
「どうする在宅ケア」「支えあう地域の創造」などをテーマにした「全国の集い」(主催・在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワーク)が十六日、東京の一橋大学で始まりました。
基調講演では、「どうする二十一世紀前半の医療・介護」と題して、厚生労働省の辻哲夫前事務次官と、日本医師会の唐澤祥人会長が、それぞれ今後の社会保障の課題などについて話しました。
辻前次官は、昨年六月の国会で成立した医療「改革」法の目的が、今後急増する高齢者の医療費を抑制することであることなどを紹介。「数値目標は決めていないが、平均在院日数の短縮などを通じて、結果として医療費を抑える」などと述べました。また、長期入院のお年寄りが入る療養病床を二〇一二年までに二十三万床も削減することについては、「大変困難だが、どうしても避けて通れない」と強調しました。
これにたいし、日医の唐澤会長は、療養病床の将来についての独自の試算をもとに、「厚労省の計画では一二年には、十一万人の『医療難民』が生まれる」と警告しました。また、深刻化する医師不足の本質的要因に「医療費抑制策」と「財源手当てを伴わない拙速な制度変更」があり、その現場へのしわ寄せは「限界にきている」と力説。「これ以上の社会保障費の削減は生命の安全保障を崩壊させる」と訴えました。
その後のシンポジウムでは、大会実行委員長でもある新田國夫氏(新田クリニック院長)が、来年四月から開始予定の七十五歳以上を対象にした後期高齢者医療制度について、一律の保険料負担や、健康診断の「努力義務化」への後退などの問題点があることを指摘。「なぜ七十五歳以上を差別するのか」と疑問を述べました。
「全国の集い」は十七日までの予定で、介護・医療・障害者福祉などをめぐって、分科会で報告・議論が行われます。
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