2007年9月18日(火)「しんぶん赤旗」
主張
消費税増税
度はずれた財界の身勝手
自民党総裁選の二人の候補者が、消費税増税について「経費節減が及ばない場合、消費税を考えざるを得ない」(福田康夫元官房長官)、「(福祉目的税として増税を)十分検討すべきだ」(麻生太郎幹事長)とのべています。
庶民に負担ばかり押し付ける「構造改革」に厳しい審判が下されたにもかかわらず、従来どおりの消費税増税論を語る姿に「反省」はまったく感じられません。
自民党が消費税の増税に固執する“本当の”理由は明白です。
最大の“後援者”である財界の不動の方針だからです。
日本経団連の要請に
安倍晋三首相が辞任を表明する直前の十二日午前、日本経団連と自民党の首脳懇談会が開かれました。
この席で、経団連側が「財政再建の上でも最終的には消費税上げを考えなくてはいけない」と要請しました。これに対して麻生幹事長は「消費税引き上げも検討する必要があろう」と答えています。
日本経団連の御手洗冨士夫会長(キヤノン会長)は、十日の記者会見でも、消費税率引き上げの検討を政府に要求しています。
御手洗会長は二〇〇六年に経団連会長に就任すると同時に、奥田碩・前会長(トヨタ自動車前会長)の後を継いで、経済財政諮問会議のメンバーに納まりました。
経済財政諮問会議は財界・大企業代表が会議の中心に座り、庶民増税と大企業・大資産家減税、社会保障の改悪、雇用規制の緩和など、財界本位の「改革」を進めてきました。一握りの大企業と大資産家のために庶民を犠牲にする、弱肉強食の「構造改革」です。
御手洗会長は、参院選で与党が大敗を喫しても「今回の選挙で、現政権の政策・実績が否定されたわけではない」とのべて、いち早く安倍政権と「構造改革」を擁護しました。それは、みずからがこの「改革」の推進者であり、既得権者であるからにほかなりません。
財界が消費税の増税に固執し、何度も政府・与党に要求しているのは、財界の新たな巨大利権がかかっているからです。
そのことを会長本人が露骨に語っています。御手洗会長は国と地方を合わせた法人税率を10%も引き下げるよう求めていますが、その財源を問われて「消費税を上げる」と明言しました(二月の記者会見)。
財界は消費税を社会保障の目的税にすることで、年金保険料の企業負担など大企業の社会保障負担をなくすことまで提言しています。
消費税は、税額を価格にすべて転嫁できる大企業には、実質負担がゼロの税金です。消費税の増税によって、法人税を減税させ、社会保障負担を免れることは、大企業にとって巨大なコスト削減策となります。庶民に大増税を押し付けて社会的責任を逃れ、労せずして大もうけを図ろうというのは、度はずれた身勝手というほかありません。
ゆきすぎた大企業減税
トヨタからの六千四百四十万円、キヤノンからの四千万円を含めて、三十億円近い企業・団体献金を受け取っている自民党は、財界に首根っこを押さえられています。
大企業・大資産家へのゆきすぎた減税と軍事費などの無駄遣いを「聖域」にして、税制「改革」といえば消費税増税しかないかのような議論は国家的なごまかしです。
もっぱら大企業の利益追求に奉仕する政治に未来はありません。
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