2007年9月26日(水)「しんぶん赤旗」

福田内閣発足

「改革」継続宣言・対米関係配慮・疑惑閣僚の再任

路線・人事とも反省なき継承


 参院選での大敗という国民の審判を受けて、自公政権には何よりも大企業中心、アメリカいいなり政治の転換という課題が突きつけられました。

 その課題に背を向けて居座ったうえ、最後は政権投げ出しという前代未聞の無責任さで退陣した安倍晋三前首相の後任だけに、福田康夫首相には、民意を受けとめての反省がいっそう求められていました。

 しかし、福田首相による組閣人事はこうした「反省」とは程遠いものでした。福田氏は、総裁選の中で「『構造改革』の継続」を繰り返してきましたが、人事でも、民意に背を向けた安倍改造内閣の閣僚をほぼそのまま引き継ぎました。

 その中でも「構造改革」推進の中心である大田弘子経済財政相、甘利明経済産業相、渡辺喜美金融行革担当相は留任。消費税増税を公言してはばからない額賀福志郎財務相も留任しました。まさに「改革」継続の宣言です。

 もう一つの特徴は、対米関係に特に配慮した布陣です。防衛相には、米軍のイラク攻撃を支援するイラク特措法(〇三年)を強行した石破茂元防衛庁長官を起用。この間、インド洋での海上自衛隊の給油活動継続に取り組んできた高村正彦防衛相を外務相に横滑りさせました。米国の求める給油活動継続を最大の使命とする布陣です。

 町村信孝官房長官は二十五日夜、組閣人事発表の会見で、「安倍内閣と福田内閣でどこが変わったか」との問いに対し、「これが違うんですということを申し上げるのは適切ではない」「数多くのことを引き継ぎ、同じ方向で取り組んでいく」と述べざるをえませんでした。

 福田首相自身が「構造改革」と海自の派兵継続に固執している以上、内閣の顔ぶれもかわりようがなかったともいえますが、その反省のなさにはあきれるほかありません。

 「政治とカネ」の問題でも反省はありません。

 この間、具体的に疑惑を指摘されてきた閣僚の多くを再任させています。岸田文雄沖縄北方担当相、鴨下一郎環境相、上川陽子少子化担当相、額賀財務相、高村外相らです。そもそも福田氏は、政治活動費すべてに領収書を添付することに対し否定的であり、そうした姿勢を露骨に反映しています。

 本来、参院選での大敗の結果を受け、直ちに安倍前首相の退陣が実現されるべきでした。その意味で、新内閣は二カ月遅れでやってきたものです。しかし、その顔ぶれが安倍改造内閣を路線とともに継承するものであったことは、国民の大きな幻滅を呼ばざるを得ません。

 自民党の深刻な「危機」の中で「再生」をかけて登場しようとした福田新内閣ですが、その出発である組閣人事において、自己分析力と人材の欠如という政治的衰退の深刻さをあらわにしました。 (中祖寅一)


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