2007年9月26日(水)「しんぶん赤旗」
緊急性増す温暖化対策
“行動と指導力発揮を”
気候変動会合で国連事務総長
【ニューヨーク=山崎伸治】二十四日開催された国連気候変動ハイレベル会合の冒頭演説で、潘基文国連事務総長は気候変動、地球温暖化問題の「緊急性が増し」、「いま行動しなければ、その影響は破壊的なものになる」と強調し、世界の指導者に「かつてない行動と指導力」の発揮を訴えました。
潘事務総長は、発展途上国と島嶼(とうしょ)国が危険な影響を受け、生存がかかった事態にさえなっているが、先進国の指導性と貧困国への支援は不十分で遅れていると指摘。地球的規模の課題として国連の枠内での交渉が「ふさわしい場」であり、十二月のインドネシア・バリでの国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP13)で「包括的な合意に向けた交渉の場」設定で打開を実現するよう呼びかけました。
各国の発言では、西太平洋ミクロネシアのモリ大統領が、海面の上昇、高波に加えて干ばつなどの異常気象で固有の水生・陸生生物が危機に直面し、河岸の町の存続が脅かされていると発言。独自の環境保全措置を国家をあげて取っているが、それには「さらなる財源が必要だ」と窮状を訴えました。
「自分たちが苦しむ原因をつくったのは、遠く離れた地の人間の活動」であり、「島嶼国をはじめ最も脆弱(ぜいじゃく)な社会に住む人々を保護すること」は、気候変動枠組み条約で達成すべき最低限の措置だと強調しました。
フィリピンを代表して発言した非政府組織(NGO)のゴーティエさんは、同国が気候変動に最も脆弱で、昨年の二度の大規模自然災害で二千五百人が死亡し、この議場にいる人の二倍に相当すると指摘。「わたしたちの将来は再生可能なエネルギーにある」とし、それは核エネルギーや「クリーンな石炭」とは異なるものであり、先進国は「真の解決に資金を提供し、技術を移転する」よう求めました。
二〇二〇年までに一九九〇年比で温室効果ガス排出量を少なくとも20%削減すると決めている欧州連合(EU)の執行機関、欧州委員会のバローゾ委員長は、EUが京都議定書を守り達成する決意を表明。「京都後」についても、「公正で有効な地球的合意」を前提に、30%削減まで引き上げる用意を表明し、五〇年までに九〇年比50%削減を実現する必要性を訴えました。
バローゾ委員長は、バリ会議までに排出権取引強化、エネルギー効率向上、再生可能エネルギーの利用拡大など、欧州委員会として「包括的措置」をまとめ、欧州が先陣を切って「低炭素経済」を目指すとの意欲を示しました。
合意へ意思を示した
事務総長の議長総括
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行動はいま可能であり、それは経済的にも意味を持つ。行動しないことのコストは、速やかな行動のコストをはるかに上回る。
長期目標という概念が提起され、多くの国が法的に拘束力のある目標を求めた。二〇五〇年までに排出量を半減し、気温上昇を二度に抑える必要性について、何度も言及があった。この問題はバリ会議以降の交渉課題で重要になるだろう。いかなる解決策も、公平で共通だが差異のある責任という原則に基づき、いかなる行動要件もそれぞれの能力にふさわしいものでなければならない。
間違いなく、先進諸国がいっそう大きな排出量削減をする必要がある。同諸国は引き続き、この面で指導性を発揮しなければならない。
開発途上国が自国民によりよい生活水準を達成する機会を損ないたくないというのは理解できる。さらに、たとえばよりよいエネルギー効率や計画を備えた、より持続可能なエネルギー体系によって、排出をあまり必要としない成長が可能となることも認めている。
技術は気候変動に対する私たちの集団的対応の中で不可欠の役割を果たす。クリーン技術は持続可能な開発と、気候変動への私たちの対応の中心にある。
気候変動に関する積極的な行動は、持続的な経済開発と貧困根絶という基本的な優先課題で欠くことができないということで一致したと確信する。
気候変動に関する行動は経済開発を脅かさない。
今回の催しは交渉の機会となるものではなかった。最高レベルの世界の指導者たちが協調した行動を通じて気候変動という課題に取り組むという政治的意思を表明することが狙いだった。みなさんは再度述べたが、この問題について決定できる唯一の場は国連気候変動枠組み条約だ。
私たちはそうした合意が二〇一二年末までに発効することを確保する必要がある。私たちは交渉過程で大きな全体像を失ってはならない。それは私たちの惑星を守るということだ。
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