2007年9月28日(金)「しんぶん赤旗」
主張
海自の米艦給油
素直に脱法行為の事実認めよ
福田康夫首相は、アメリカのアフガニスタン「報復戦争」にたいする自衛隊の給油支援を継続するための新しい法案を、この臨時国会に提出すると言明しています。
テロ特措法にもとづくインド洋での米軍艦船などへの給油支援は、アメリカのアフガニスタン「報復戦争」の支援に限定されています。それ自体憲法違反の戦争支援ですが、それにとどまらず、日本の油がイラク軍事作戦で使われているのではないかという疑いも重大です。それを裏付ける事実が政府説明とアメリカの資料であきらかになりました。
イラク作戦への流用
防衛省がこのほど、二〇〇三年二月二十五日にオマーン湾で自衛隊が米補給艦ペコスを経由して米空母キティホークに給油した量が二十万ガロンでなく八十万ガロンだったと訂正したのはその一例です。この訂正は、イラク作戦への流用を否定した政府の当時の説明がごまかしであったことを政府みずから示すものです。
当時、キティホークがアフガニスタン作戦とイラク作戦の二つの任務を併せ持っていたことは米海軍ニュースでも明記されていたことです。米海軍軍事海上輸送軍団の機関誌『シーリフト』も、「『イラクの自由作戦』の期間中、ペルシャ湾で燃料を受け取る」と書いています。
キティホークがイラク作戦を実施していたことは明白であり、日本の給油が即イラク作戦支援となるのはあきらかでした。
このイラク作戦への流用を隠すためにもちだしたのが、給油の量は八十万ガロンではなく二十万ガロンという説明です。キティホーク艦長が日本から受け取ったのは八十万ガロンだといっているのに、日本政府は二十万ガロンだといい続けたのは、少量なので空母がペルシャ湾に移動しイラク作戦をおこなうことにはならないという筋書きにするためです。
この詭弁(きべん)を主導したのが当時、テロ特措法案の主務大臣であった福田康夫官房長官(現首相)です。福田氏は、二十万ガロンはキティホークが「ほとんど瞬間的に消費してしまう」ので「イラク関係に使われることはあり得ない」とまでいいました。
給油量が八十万ガロンだったと防衛省が認めたことは、同空母のイラク作戦への給油の流用を認めたのと同じです。
しかも、市民団体ピースデポが入手した米海軍の航海日誌には、海上自衛隊から八十万ガロンを受け取ったキティホークが、給油直後にペルシャ湾に入り、イラク作戦を実施していたと明記しています。
自衛隊の脱法行為はあきらかであり、法案の主務大臣として国会と国民をだましてきた福田首相の責任は重大です。事実隠しをやめて、事実を政府は説明すべきです。
インド洋から撤退せよ
インド洋での自衛隊の給油活動は、国連憲章の精神をふみにじった米国の「報復戦争」にたいする憲法違反の戦争支援活動です。日本の給油がテロ特措法さえふみにじってイラク作戦にまで使われていたとなればなおさらです。
昨年三月自衛隊の補給艦「ときわ」が給油した米駆逐艦「ディケイター」は、空母「ロナルド・レーガン」とともにイラク作戦を実施中だったと米海軍ニュースが伝えたように、流用はいまも続いています。徹底解明することが国会に求められています。
同時に給油継続のための新たな法案を阻止し、自衛隊をインド洋から撤退させることが必要です。
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